長い妄想(君☆届連載)U


□お似合い
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お似合いC


「「あ、」」



顔を見合わせた途端お互い小さく声を上げた


下駄箱の所で偶然鉢合わせた男子生徒は
昨日までは知らなかったヤツ


黒沼から昨日聞いて委員長であることを知って
彼女との接点を知った


一年の頃からあんな風に二人で過ごしたりしていたのだろうか……


昨日の残像が目に焼き付いて離れない



「やっとか」

「え、」

「やっと俺を知ったんだ?………風早」



名前を言われて何故だがドキッとした


なんで俺の名前を知っているのか……
たまたま知ってたのかも知れない


だけど………違う


コイツは……



「俺、黒沼さんの事好きだから……」



そう、黒沼との絡みで俺を知っただけなんだ


全ては黒沼と繋がっている



「一年の時からずっと………俺、引く気無いから……」



俺だって!
手放す気なんてない!

負けないくらい好きなんだ!


俺と黒沼は付き合ってるんだから


あ……


付き合ってるから?
付き合ってるからなんだって言うのだろう……


付き合ってても、彼氏と彼女でも……
こんな関係なんて脆いんじゃないだろうか


何時、どうなったってて可笑しくない

好きな気持ちが他へ移ることだってある



「ふーん、案外簡単なんだな」

「なっ!どう言う意味だよ!」

「俺と黒沼さんが二人でいる姿見てどう感じた?」

「!?」

「俺、本気だから……風早がそんなだと……攫うよ」



そう言って去って行った


ギュッと握り締めた拳が痛い


でももっと痛いのは………



俺も本気だって何で言わなかったんだよ!俺っ!


アイツは俺を……
俺と黒沼をずっと見てたんだ


俺は知らなかった
名前すら知らない


俺は………


遠くなる背中を俺は唖然と見つめていた



俺は………
アイツから黒沼を引き止める事が出来るのだろうか……


黒沼はアイツより俺を選んでくれるのだろうか



「情けねぇの……」



一人呟いた言葉が俺の心を酷く軋ませた


ふらふらと教室に向かえば


そこに……
見たくない二人の姿があった


目が合ったのは……アイツ


わざと、だ


俺に見せ付けるようにアイツは黒沼に近づいた


黒沼は俺に背中を向けて俺には気付いていない


進んでいた足が竦む


アイツがそっと黒沼に声を掛けたのが見えて
黒沼がこちらを向くのが解った



無我夢中というのはこういう事を言うのだろうか


わけが解らなくて俺はそのまま背中を向けて走った



途中、クラスの連中とか龍とかの姿が見えた気がする


でも、そんな事気にして居られないほど必死だった



あのまま振り返った黒沼は俺を見れば笑ってくれただろうか


アイツよりも俺に……
俺の方へと来てくれただろうか


俺に挨拶してくれたのかな?


――――笑ってくれただろうか






はぁ、はぁ……


壁に背中をあずけてズルズルと座り込んだ


冷たいコンクリートの感触が心地いい



どうして逃げたりしたんだ

どうして……



「か、風早くん?」

「くろ、ぬま……」

「どうしたの?大丈夫?」



追い掛けてきてくれたのか……


アイツよりも俺のところに?



「風早くん??」

「アイツ……」

「え?」

「名前、なんて言うの?」

「名前?え?あ、もしかして……しょうやくんの事?」

「しょうや?」



ドクン


ドクン



心臓の音だけが聞こえる



「俺は“風早くん”でアイツは“しょうやくん”なの?
 黒沼の彼氏はどっちだよ………」

「え?風早………くん?」

「俺………自信……ない」



どうして……


一度だけ“翔太くん”と呼んでくれた


その口で他の男の名前を呼ぶのが許せなかった



自信なんて、最初から無かった


俺と黒沼じゃ………



“好き”だけじゃダメなんだ









(暗〜い風早(笑)でも大好きなのよ〜許してね
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