長い妄想(君☆届連載)U


□彼の彼女
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彼の彼女 中編



先生が居ないのがわかったのか
控えめな足音が近づいて来るのがわかった


何も音がない保健室ではそんな小さな足音でもよく響く



「ごめんなさい、失礼します」



少しだけ光が差した
私の方のカーテンを開けたのだろう


でも直ぐに隣へと足音が向かう


そう、用事があるのは私にでは無い



「風早くん?」



彼の彼女だ



解っているけど……
認めたく無い事実



「くろ……ぬま?」

「大丈夫?」



私が呼んだ時は反応しなかったのに………
彼女なら……



「怠い……頭……痛い……」



子供が親に甘えるような声


びっくりした


風早なら“大丈夫だよ”って言うと思ってた



「黒沼………手………」

「手?」

「つないで……」



え?え?えーっ?
何?急に甘い雰囲気になったりする?


いや、病人だし甘い雰囲気なんかじゃないだろうけど

風早ってこんなキャラだっけ?

風邪だから?



「風早くん……家、帰る?」

「………やだ」

「え?先生はお家に連絡したんだよね?」

「してない、黒沼と……帰る」



なにーっっ?


子供みたい……



風早っていつもみんなの輪の中心にいて
子供みたいにははしゃいで、笑ってるけど


今はただの駄々っ子の子供じゃん!



「あの、え……っと……」

「黒沼と一緒じゃないとやだ」



だ、誰?

この人は誰?ってか、風早どんな顔で言ってんのーっ?



戸惑う彼女を助けるように終業のチャイムが鳴った



「あ、授業終わっちゃった……」

「……あ〜……アイツら来るよな……」

「お、お邪魔だよねっ!」

「ダメッ!」



パシッと音がした



きっと立ち去ろうとした貞子の腕を掴んだのだろう


静かな保健室で自分の心臓の音が聞こえちゃうんじゃないかと思ってしまう



………………



な、なぜ沈黙ー?


い、いったい何してるの?



「黒沼………すき」



!!!////



なぜ今告白?

顔が熱くなるのがわかった


別に自分に言われたわけでは無いけど
こんな間近で人の告白なんて聞いたことないし


しかも全てが甘い!
なんかむず痒い!


早く誰か来てよ!
なんでこんなときに限ってジョーは来ないのよ!



「あの………わ、私もっ///その……」



バタバタと足音が聞こえた


いつもなら騒がしくてうるさいだけのジョーの“風早ー”の声も今は天の助け



「ちっ、ジョーだ」



今、舌打ちしたよね?
したよね?聞き間違いじゃないよね?



「風早ー大丈夫か?」



ノックもしないでズカズカと入るジョーの後ろで
“静かにしろよっ”“寝てるんだろ?”の声はするけど
ジョーってばカーテンを開けるんじゃない?


ジョーの性格を考えたら人が寝てるとか考えないじゃない!


やだ、絶対アイツなら開ける!


布団を頭まで被った



「あ、あの………こっちです……お隣にも寝てる方がいらっしゃるので………」



よ、良かった!!


貞子が声を掛けてくれたからジョーは隣へと行ったみたい



「風早!大丈夫かぁ!俺に掴まれっ!」

「いいよ、だいぶマシになったから」



さっきまでの甘えた声では無くて力ない声ではあるけど
風早のしっかりした声だった



貞子には甘えてたくせに……


みんなに連れられて教室に戻るみたい


二人きりの時間はほんの少しだけだった



「あ、あのー、失礼します」








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