長い妄想(君☆届連載)U


□彼の彼女
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彼の彼女 後編



遠慮がちの声が聞こえて、ゆっくりとカーテンが開いた
薄く開いたカーテンから光が差し込んでいた



うそっ!
え?貞子?


咄嗟に私は寝返りをうつ振りをしながら布団を上に上げて顔を隠した



貞子がこちらに近づく気配を感じる



え、何?



「寝てる、かな?」



貞子が私の顔を覗き込んできてキュッと目を閉じて狸寝入りをする


きっと不自然な程に目に力が入っている


な、なんで、こっちに来るのよっ!
風早達と出て行ったんじゃないの?


騒がしい連中の声が遠くなって皆と一緒に出て行ったと思ってたのに



「あ、この人は……」



私の顔を覗き込んだ私を見て漏らした言葉に焦った


うわっ!ばれた?


きっと私だってばれたよね?


貞子にとっては嫌な女の私


それは風早にとっても………

好きな人に嫌われてしまった事実
消せない事実だ



「顔色が悪いなぁ、大丈夫かな、」



心配そうに小さく呟いた後、額がヒヤリとした



貞子の手だと気付くのに少し時間が掛かった



暖かで丸い感じの先生とは全く違う
細く冷たい手だった


ひんやりとした感触に眉間に力が入ったけど
何故か気持ち良くてだんだん眉間の皺がゆるんだ



「早く良くなるといいですね、」



なんで……


私だってわかってるんでしょ?
貞子にとって私は……


そんな私に、どうしてっ!


――――そんな優しい言葉


「黒沼?」

「あ、」



貞子は慌ててベッドから離れてカーテンの外へと出た


一瞬にして離れてしまった冷たい手を追いそうになった自分に驚く



「何してるの?」



心なしムッとした声色

最初に保健室に入ってきて時の様な苦しそうなものはでは無かった


ほんの少し横になっただけなのに
もう回復しちゃうんだ?



体力が違うのだろう


呑気に感心してしまう



「誰かいたの?知ってる子?」

「あ、ううん、騒がしかったしちょっと気になっちゃって……
 凄く、しんどそうだった……な」

「むっ……俺だってしんどいよ………」

「あ、そ、そういう意味では無くて!」



明らかにむっとした風早の声に口元が緩んだ

さっきの風早とは思えない程の甘えっぷりを目の当たりにしたから
あまり驚くことも無かった



「俺の心配もしてよねっ」

「し、してるよ!早く良くなって欲しいよっ!」



さっき私にも掛けてくれた言葉と同じ


きっとそれは本心――


貞子の言葉には嘘は感じられなかった


本当に心配して、そう思ってくれてるのだと



貞子からしたら私なんて敵なのに………



「黒沼は俺だけに優しくすればいいのっ!」

「え?えぇ?そ、それはっ!」



何それ……


遠くなっていく声に耳を傾けながら呆気に取られる




「ただの彼女馬鹿じゃん」



誰も居なくなった保健室に自分の小さく呟いた声が響く


不思議と悔しさとか悲しみとかは無かった


そっと額に手を当てればひんやりとした感触が戻った気がした



ただの餓鬼で彼女馬鹿っ!


人が寝てるってのにさ!
バカップルじゃんっ!



でも……
風早が甘えれるのは貞子だけなんだろうな



「新しい恋、探そっ」



私が好きだった彼が選んだ彼女とは友達にはなれないだろうけど



ほんの少しだけ


彼女を選んだ気持ちがわかったかも……



ふんっ、ちょっとだけね











お付き合いありがとうございました
こちらは蛍様から頂いたリクエストになります
《過激派のユカが、生理痛で保健室のベッドで寝てたら
風早が発熱で隣のベッドに…二人きりでドキドキするユカだったが
様子を見にきた爽子に甘える風早との会話をカーテン越しに聞いて
風早の方がベタ惚れである事を知り
そのバカップルぶりにだんだん呆れて行くとゆうお話しが希望です!》
以上がリクエストの内容でした
おぉ、ユカ視点と驚きながらもリクエストを頂かないと
自分では考えられないお話でもあって楽しく書かせて頂きました
蛍様のリクエストに添えれてるか分からないですが
楽しんで頂けましたでしょうか
リクエスト下さった蛍様
お付き合い下さった女神様
ありがとうございました
こんな辺境サイトですがまた遊びに来てやって下さいね




2011/11/01 完結 翠
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