君☆届妄想(龍×千鶴)


□残り香〜ツルバギア〜
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残り香〜ツルバギア〜




来てたのか・・・

部屋に入るなり漂うのは好きな女の香

ずっと、傍にいて

小さい頃からずっと一緒だった

小、中、高校まで一緒で


はじめて、離れた


大学はお互い違う道を進んだ

それは、きっとお互い解っていた事だ

夢を持って、将来を考えた時

ずっと、同じ道を通るなんて出来ない事は解っていた

往復二時間以上かかる通学

一人暮らしの道もあったけど

会えなくても千鶴と離れるなんて出来なかった


だけど

思っていたよりも、それは辛いものだった



スーッ


部屋に残ったあいつの香を吸い込むと

思い出すのは


ニシシッと色気の無い笑顔



「どんだけ、会ってないんだっけ?」


言葉にすると溢れるのは


“会いたい”

“会いたい”


一日たりとも会わなかった日なんてなかったんだ

明日だった時計の針は今日を指している



「千鶴・・・」


「おせーんだよ!」


後ろから聞こえる声はよく知っている

聞きたくて仕方なかった


振り返れば、腕を組んで、いつもの笑顔


「いつも、こんな時間なのか?」


俺の横を通り過ぎてベットに向かう千鶴


夢か、幻か・・・


ふと擽る千鶴の香は

残り香ではなくて


現実だった



「うぇ?りゅ、龍?」


腕を掴み、そのまま抱き寄せた

残り香なんかじゃ我慢できない

思い出すだけじゃ、物足りないんだ


「どうした?疲れたのか?」


戸惑っていた千鶴はポンポンと俺の背中を叩く

そして

そのまま、そっと背中に手を添えた


全神経が千鶴を感じている

何から伝えれば良いのか解らずに

抱き締めた腕に力を込めた


「龍・・・おかえり」


あぁ、そうだ

伝える事なんて、ただ一つだ

それが、千鶴には伝わらなくても

答えが同じでも・・・


「ただいま・・・・・好きだよ」

「ふっ、知ってるよ!」

「ふん、覚えとけよ!」

「何をーーーっっ!生意気だなあ!」


クスクスと笑う千鶴の振動が愛しい

いつか、違う答えを言わせてやるからな

それまでは何度だって言ってやる



「ってか、龍、そろそろ離せよ!重いんだよ!」

「やだ」

「ぷっ、子供みてぇ!」

「なんとでも?」


また、当分、残り香しか味わえないんだから

それくらい、我慢しろよな!

離したらまた、同じ日の繰り返しが待ってる



やっと、離れた時には千鶴の呆れた顔が映った


「やっと、解放!」

「言ってろ」


いつか絶対、離してやらねぇからな



「じゃあ、帰るわ!」

「あぁ・・・」


次、いつ会えるのかも解らない

明日な・・・そう言いたいのに今は言えないんだ



「明日も来るから」


部屋の扉に手を掛けて背中を向けている千鶴

何度も、見てきた背中


いま、なんて?


「・・・・・・・・・・」

「ほら、あ・明日は土曜だし、大学も休みだしさ・・・・・」


少しの沈黙の後、千鶴はこちらを向いた

珍しく真面目な顔の千鶴

泣きそうな瞳を見つけたら

また



抱き締めていた


ギュッと背中のシャツを掴む千鶴に

想いが加速していく


「龍がさ・・・傍に居ないのに慣れなくてさ・・・」


同じなんだ

俺だけじゃない?

少し震えてる背中に愛しさが込み上げる

もう、いいだろ?

違う答えを言ってくれよな



「千鶴・・・好きだよ」


「・・・・・・・・・あたしだって好きだよ」








久々の龍ちづでした
結局最後は龍→←ちづだよね
この二人はやっぱ好きだわ
お気に召さなかったらごめんなさい
少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです

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