長い妄想(君☆届連載)U


□歩み
1ページ/2ページ

歩み 前編




「え・・・っと・・・」



参った………



目の前で目をキラキラさせて胸の前で手を組んで期待しているようなその表情も仕草も


そりゃまぁ、とてつもなく可愛いっっ!んだけど………



ちょっと………罪悪感というか
申し訳ないというか………


きっと黒沼が思っているような答えは言えないだろうから………
コレがいつも感じる俺と黒沼の温度差と言うか
男女の差と言うか………




だって、俺は………





遡ること一時間前



今日はテストの最終日でテストが終われば授業も無いわけで
黒沼と俺は久しぶりのデート


まぁ、今日は生憎の雨で学校が終わってから俺んちに来た
こうやって学校帰りに互いの家に寄るのは初めてじゃないけど
今日は少し状況が違った



いつもと少し違う黒沼
俯いて、何か考えている様子
その原因はわかっていた



周りはテストから解放されて嬉々としてクラブへ行ったり
友達と遊ぶ約束をしたり
俺は勿論、黒沼と



でも、その帰り道で女子に声を掛けられた


そして、いわゆる告白をされたわけで………
別に告白をされるのは初めてのことじゃないけど
黒沼と一緒の時に呼ばれたのは初めてだったから


黒沼は“行ってきて、待ってるから”と気を遣ってくれた
別に告白されて嬉しくないわけじゃないけど………


腹が立った

相手の女子に


気を遣わせて、あんな表情させてしまって
安心させてあげるような言葉一つ言えない自分に



わざわざ黒沼と一緒のところじゃなくても良いじゃないか
その前に付き合ってるのわかってるのに………



でもその気持ちを抑えることなんて出来ないのもわかっているつもりだ



もし自分だったら――――



黒沼が他の男と付き合ってて、ずっと好きだったら?
簡単には諦められないのも事実だ



でも、黒沼に寂しげな不安げな顔をさせてしまった自分も、
相手の女子にも腹が立ったんだ



勿論、ちゃんと断ってそのあと俺の家に来てもどこか元気がない



やっと勇気を出そうと黒沼に声を掛けようとしたら
「風早くん!私に出来ることはあるかな?」と先に言われた



最初こそ必至で訴えていたけど、
きっと言葉にして吹っ切れたのだろうか
寂しげな、顔は何処へやら



「私!なんでもする!風早くんに喜んでもらいたいの!」

「え・・・」



その時に自分の頭の中に浮かんだ言葉は消そうと思ってもなかなか消せなかった



密かな期待



な、なんでも?まじで?



俺はちらっと黒沼の唇へ視線を移した



思い出す柔らかな感触



キス未遂の修学旅行からやっと念願の初キスをしたのは今から一か月前



それからというもの箍が外れてしまった俺は隙を見ては軽いキスをする
深いキスまでは行かないけど長いキスだって
何度も啄むようなキスだって



黒沼にして欲しいこと?
そんなの、決まってる
それは―――



「本当になんでも?」

「うん!私で出来ることなら!何かあるの?」

「あ・・・まぁ、あるにはあるかな?」

「私で出来る?」



むしろ黒沼しかできませんからっ!



期待に満ちたその顔に罪悪感がまたふわりと湧き上がってくる


でも、俺だってこんなチャンスをみすみす見逃して堪るかっての!



「い、いいの?」

「うん、もちろん!」

「本当に・・・ほんと?」

「うん!」

「じゃぁ、・・・黒沼から・・・キスして・・・・・」



カチン


そんな音がどこからか聞こえてきたかの様に
黒沼は目の前で固まってしまった―――







(そりゃ固まるだろ!(笑))
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ