if(君☆届け パラレル)


□あの子と彼
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あの子は俺の事なんて知らない
いつも窓際に座るあの子
名前も知らないあの子を俺は知っている


初めて会った時、もう俺は恋に落ちていた


いつもより早くに目覚めた俺が乗り込んだバスに彼女はいたんだ


まだ真新しい制服に身を包んだ彼女は
俺が乗り込んできたのにも気付かないで
窓の外を眺めていた


通勤通学ラッシュよりずれた時間のバスは
たくさん席が空いていたのに
俺は彼女の二つ後ろの席に座る

特に気になったわけでも無いけど
ふと彼女に目をやると

窓に小さく息を拭きかけて白く細い指で
“スキ”と書いて慌ててすぐに消していた


静かだった心臓が大きく打ち始めて
静かな車内で自分の鼓動が聞こえてしまいそうだった

その日から俺はそのバスに乗るようになった
背筋を伸ばしていつも窓の外を見ている彼女


彼女の視線に映りたいと思うのに
彼女の前の席には座ることはできなかった

正面から見る勇気もなくて
彼女の横顔が見れるだけで心が高鳴る


彼女にスキと言わせるヤツが気になった
文字は消されても彼女の想いは消されていないのだろう


だけど
ここ一週間彼女をみていない

初めて彼女に恋をしていた自分に気付いた


ほんの少しでも彼女に会いたい

名前も知らない彼女


知っているのは俺が乗るバス停よりも前に乗っている事
そして・・・5つ先のバス停で降りる高校に通っている事





!!!!!!!!!!!!!!!!!!


帰りのバスに彼女はいた

「貞子ちゃんはいつもバス?」
「う・うん・・・師匠は?」

だけど彼女はいつもの席じゃなくて
一番後ろで男と並んで座っていた
そいつが“スキ”の相手?

俺は初めて彼女より前の席に座る
俺の想いは届くことないのだろうか?


俺より先に俺の横を通って男が降りた


「じゃあね!貞子ちゃん!」
「ま・また明日」


さっきも感じた違和感
さだこ?

彼女の名前だよな?
何となく彼女のイメージじゃなかった

背中に感じる気配は
まだ男に手を振る彼女


伝えよう

言わなかったら届くことさえない想い
たとえ君には別の“スキ”の相手がいたとしても


俺は自分が降りるバス停を過ぎて彼女が横を通るのを待った

二つ先で彼女が横を通ったので俺も立ち上がる
もう一人若い女性も立ち上がったので少し安心する


よく考えるとかなり危ない男だよな
だけどもうそんな事言ってられない


「あのっ!」
「え?」

彼女の背中に声を掛けると彼女と初めて目が合った


本当はずっと横顔じゃなくて
こうして瞳を交わしたかったんだ・・・
初めて見る大きな瞳にまた心臓が大きく高鳴る


「俺・・・風早翔太って言うんだけど」
「は・はい」

「朝いつも君を見かけて・・・えっと・・・」
「あ・朝、バス一緒ですよね?」

「え?」
「あああ!ち・違いました?ご・ごめんなさい!」

「ち・違わないよ!朝バスで一緒なんだ!」

俺の事なんて知らないと思っていた
視線に入っていないと思っていた

伝えたい言葉はたった一つ


「好きなんだ!」


驚いた顔の君も
さっきの慌てた君も

誰かを想っている君も・・・


「え?あ・あのっ・・・」
「急にごめん!でも毎朝君を見かけてずっと好きだったんだ!」

「それは・・・恋愛感情で?」
「もちろんだよ!」


「あ・・・わ・私もスキ・・・です」
「え?」


彼女の口から出た言葉に思考回路が一旦停止する

「え?お・俺?」
「ごめんなさいぃぃ!毎朝盗み見してました!」

「えぇ?じゃ、じゃあ・・・彼女になってもらえる?」
「あわわわ!えっと・・・・・・・・ハイ」


俺は思わず彼女を抱き締めていた

「すげえ嬉しい!!!」
「わわわ!あのっ!」

「あっ!名前!教えて!」
「黒沼・・・爽子です」

「さわこ?どんな字?」
「爽やかな子で・・・名前負けしてしまって・・・」

「やっぱり!黒沼さんにぴったりだよ!」

爽子!さだこなんて似合わないよ!


「あの・・・そろそろ離してもらえますか?心臓がずんどこ言っていて・・・」
「わあ!ご・ごめん///」

思わず抱き締めていたけど
離れると淋しくて
もっとしっかり味わえば良かったな




名前も知らなかったあの子は
今日から愛しい俺の彼女







奇跡的に起きてた私
ただ昼寝し過ぎただけですが
更新できちゃいました!
一目惚れ風早!ストーカー風早笑)
ホントある意味危ないよ!
だけどイケメンだから許しちゃう
「黒沼さん」と言わしたかっただけです〜
そして爽子視点の「彼」も今日中に更新しちゃうかもしれません!
少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです!
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