if(君☆届け パラレル)


□出会いは必然に
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「浮気調査ですか?」
「はい」


すっと差し出された写真には髪の長い女性が写っていた


「この方ですか?」
「ええ!主人の秘書ですの!
 大人しい顔してまんまとやられましたわ!
 この女が主人を誑かしたのよ!!」


目の前の夫人をみて心の中で大きなため息をつく
愛し合って結婚したのだろう

その結果はこれ


「現場を押さえてくださいな!
 しっかり慰謝料は取らないといけませんからね!」

「はあ・・・この方の名前は?」
「黒沼爽子よ!住所はコレ!
 このマンションも主人に買ってもらったのよ!」


そう言ってマンションの写真と住所を手渡してきた
ここまで情報があるなら追い詰めることはできるだろう

しかし離婚は出来ても徹底的な証拠はない

結局はお金


「解りました・・・ではこちらから調査させて頂き
 証拠を見つけしだいご連絡させて頂きます」
「ええ、なるべく早くお願いね!
 若いと聞いていて少し不安だったけど
 会ったら安心したわ」


少し色気を振りまく様に虫酸が走る
毛皮のコートを颯爽と翻し
コツコツとヒールを鳴らして去っていった


「お疲れ」
「はーーっっ!今日のもキツかったな〜!」


俺が一人になると同時に出てきた二人
労いコーヒーを出してくれたのは真田龍

去っていく女性を眺めながらため息を吐き
“結婚なんてしたくねー!!”と
頭を抱えているのは吉田千鶴

そして今は外出しているが矢野あやねが俺の仕事仲間

俺と龍と吉田とは中学からの友人で
矢野は吉田と高校が同じになり
“とっておきの子いる!”と紹介され
四人で小さな探偵事務所を始めた


若いから相手も警戒心があまり無いらしく
最近では浮気調査が専らの収入源となっていた


「で?今回は?」

覗き込む龍に先程の写真を差し出す

「うわっ!真面目そうなのに!女は恐いなあ!」


龍と一緒に写真を見ながら自分の体を包み込み
“恐い恐い!”と大袈裟震える動作をする吉田

お前も女だろ!って言うのは言わないでおく

時々嫌にもなるが四人が居心地が良かった
何よりこの雰囲気が好きだった


「誰がいく?」

「若そうだし風早が良いんじゃない?
 龍はおばさんうけだしね!」

珍しく的を得た事を言う吉田に
龍と顔をあわせて苦笑いをする
俺は写真とメモを胸ポケットに入れた


「じゃあ今回は俺ね!さっそく下見してくるわ」

「「いってらっしゃい」」


外に出ると寒さがツンと差し込む
胸ポケットの写真を眺めながらまた一つため息を落とす

時々、辛くなる
喜びと悲しみは紙一重だ

調査をして事実が解り
幸せになったパターンもある

そんな時には俺たちも嬉しくなって
打ち上げを称して祝杯を上げたりもした

だけど・・・今回は


浮気をするのも
探偵に調査を依頼するのも

だだの金持ちの道楽に過ぎない


道楽に巻き込まれていくのはこの女性なのだろうか?

浮気はよくない!
だけど先程の奥さんが言うように
この女性が悪いのだろうか?

本当にこの女性が誑かしたのだろうか?
俺は写真を見た時から何故かそんな想いが交差していた







この辺だよな?
もらった住所を頼りにやってきたマンション

写真と見比べて間違いないだろう


一人暮らしの女性が住むには贅沢だ


バシャッ!!


「あわわわ!す・すみません!!」
「え?」


ぼーっと眺めいたからか何が起きたか理解できていなかった

「濡れちゃいましたね!ど・どうしよう!」
「あっ大丈夫ですよ」

濡れたと言われたことで水が掛かった事に気付く
濡れた場所が急に冷えていくのを感じる


「ダメ!か・風邪引いちゃう!う・うちで乾かして下さい!」


トクン



そう言って掴まれた腕の温もりに
俺の胸は小さく高鳴った
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