萌の頂き物☆


□今日は何の日?
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「今日は何の日?」












「・・・翔太くん?」

「あ・・・・・っっ」


爽子は眠けまなこで目を擦りながら言った。

翔太は目覚めた爽子に、たらっ・・・と

冷や汗を流した。


そんな翔太の様子を爽子は不思議そうに眺めていた。


「ご・・・・ごめんっ」

「え・・・?」


バタバタバタッ


翔太は慌てて、爽子の部屋を出ると下に降りて行った。

勢いよく寝室に入ると、どかっと壁にもたれて座り込んだ。


そして、腕を組むと「う”〜〜〜〜〜ん」と唸り出した。



「え・・・・・何の日??」



************



ほんの10分前の出来事――



とんとんっ


「爽子」



部屋を何回ノックしても返事がない爽子を変に思い、
思わず戸を開ける。


いけないと思いつつ部屋を覗くと、
机にうつ伏せてうたた寝している爽子の姿。


(うわっ・・・・かわいい)



結婚してからも自分より早く起きて、
いつも働き者の爽子の寝ている姿をあまり
見たことのない翔太は音を立てないように密かに爽子の顔を覗いた。


白い肌が微かに紅潮していて、長い髪が顔にかかる。

赤い唇はぷるんっとして俺を誘っているようだった。


(うわ・・・・まつげながっ////)


寝ている爽子でないと、こんなにじっくり見れることはない。


なにせ、じっと見つめるとお互い恥ずかしくなってしまうのだ。


結婚してからもそれは変わらなかった。

翔太はどんどんと心拍数が早くなっていくのが分かった。



(だめだっ・・・・心臓がもたない////)



思わず手を出しそうになった翔太だが、
気持ち良さそうに寝ている爽子を起こしたくなくて、
側にある毛布をかけると、
静かにその場を離れようとした。


その時、視界の隅に文字が見えた。

爽子は何やらノートの上にうつ伏せて眠っていた。


書いてる途中に眠くなったのだろう。

見るつもりなんかなかった。


バサバサバサッ


「わ―っっ」



思わず動揺して側にある本を落としてしまった。

ぴくっと爽子の身体が動く。


(うう・・・・やってしまった!)




* * * 



ノートの隅から見えた文字


2月10日 ○○記念日


どうも、あれは爽子の日記らしかった。


絶対見てはいけないものを見てしまった。


翔太は見てしまった罪悪感と思い出せない焦燥感に駆られた。


「2月10日と言えば・・・明日なんだけど。やばっ俺なんか忘れてる?」


翔太は焦った。

まだ結婚して1年たってないし、誕生日、クリスマスと恋人らしくやってきたが、
特に記念日を祝う習慣などは今までなかった。

でも妙に気になる文字。

もし、爽子だけが覚えていて、
自分が覚えてないことに悲しく思うのではないか?っていうか自分も嫌だ。


ど・・・どうしよう。


翔太はさきほどから変な汗ばかり出ていた。


「翔太くん?」


びぃく―っ


かちゃっ


寝室のドアが静かに開けられると、
隙間から爽子がおずおずと顔を出した。


「あ・・・の・・・何かあった?」

「な、何にもない。な〜〜〜んにも!爽子、寝てたんだね」

「あっお恥ずかしいところを・・・ごめんなさい。毛布・・・ありがとう」

「うんっ・・・・」


爽子は変な翔太の様子を感じながらも
”お夕飯の支度をします”と部屋を出ていった。


「ふぅ〜〜〜っ」


思わず脱力。
別に焦る必要なんかない。
分かってるんだけど、やっぱ思い出したい。

爽子が”記念日”というぐらいなのだから。


「あ!」


翔太は思わず声を上げた。もしかして・・・・他の人との記念日・・・?


「いや、そんなわけないし」


翔太は嫌な思考をぶんぶん頭を振ってかき消した。

それからの翔太は以前のスケジュール表を探したり、
会社の手帳を隅々まで見たりして変な行動が目立った。


「あ・・・お砂糖が切れてたんだった・・・」


台所から爽子の独り言が聞こえる。


「俺、買ってくるよ」

「え?いいの・・・」

「うん、まかせて」

「ありがとう・・・いつもごめんね」


ご飯の支度をしてくれている爽子を助けようといつもこういう買い物は買って出る翔太だった。

翔太は外に出ている間も頭の中はその”記念日”のことでいっぱいだった。


「2月10日、2月10日・・・・ぶつぶつ」


どんっ


「あっすみませんっ」


ボーっとしていた翔太は人にぶつかってハッとした。


「あれ?風早じゃんっ」

「え?三浦・・・?」

「いや〜〜〜偶然っ!何してんの?」


うう・・・会いたくない奴に会ってしまった。



しかも何かいつの間にか側の公園でこのことを相談なんかしてるし。

こいつの話術はやっぱしすごい。


「そっか〜〜やっぱ貞子ちゃんの浮気の日とか?」

「三浦てめ〜〜っ」

「あははっ〜〜〜ウソだって。どう考えても風早一筋でしょ。」

「ま・・・まぁ///」


三浦はそんな俺を見て”爽やかくん分かりやすい〜〜〜”なんて笑ってるし。

やっぱ変わってない。こいつ


「もういいから。悪かったな」


風早がブランコから立ち上がると、ケントは優しい目を向けて言った。


「変な誤解を生む前に直に聞くのが一番だと思うよ。爽やかクンにはそれがお似合い」


そう言うと、三浦はチャッと男の俺にウィンクをよこして去って行った。


「・・・相変わらず・・だよな」


そんな三浦の軽い態度にイラっときたりしたこともあったけど、
何か今日は不思議に優しい気持ちになった。



* * *



「―翔太くんっ」


がらっ


呼び鈴を鳴らそうとした時、慌てて爽子がドアから出てきた。


「え?」

「良かった・・・なかなか帰ってこないから心配して・・・」

「あっ・・・ごめん。料理の途中だったよな・・・」


翔太は時計を見てさっと青くなった。

頭の中は2月10日のことしかなかったからだ。

もう40分も経っていた。


「ううん・・・それはいいんだけど、事故でもあったのかと・・・」


そう言って、大きな瞳に今にも落ちてきそうな涙を溜めている彼女がたまらなく愛しくなった。


ぎゅっ


「・・・ごめんな」

「えっ・・・翔太くん?////」


いきなり翔太に抱きしめられた爽子は焦った様子であわあわしている。

そして、優しく爽子の身体を離すと、
翔太はごくっと唾を飲み込んで真っ直ぐ爽子の目を見つめた。


「・・・正直に言うね」

「え・・・?」


そして、先ほどの出来事を正直に話した。

話し終えると思いっきり頭を下げる翔太。


「― ごめんっ勝手に見てしまって・・・・」


爽子は翔太のいきなりの行動を目をまん丸くして見ていた。


「そして・・・覚えてなくてごめんっ」

「え・・・・・」


いつまでも頭を上げない翔太に戸惑いながら、爽子は必死で今の話を考える。


「あの・・・・翔太くん・・・顔上げて」


それでも顔を上げない翔太の顔を下から覗き込む。


「ちょっ・・・・それ反則////」

「え・・・・じゃ、こっち向いて」


申し訳なさそうに顔を上げると、爽子は恥ずかしそうに言った。


「あのぉ・・・私の日記はお恥ずかしながら・・・・・記念日がいっぱいあります」

「え!?」


目の前には恥ずかしそうに頬を染めている爽子。

爽子から語られる事実に翔太は愕然となる。


なんと、いろいろな今までの出来事に”記念日”付けをしているそうだ。


そりゃ自分の日記だし、爽子から言い出すことなんかあるわけがなかった。


俺はがっくりと肩を落として、ソファーに全身で脱力した。


「ご・・・ごめんなさいっ。なんか悩ませてしまって・・・」


おろおろする爽子に翔太はにっこりと笑って言った。


「何でだよ。こっちが悪いのに。でもよかった・・・。
 爽子に悲しい思いをさせるんじゃないかと思ったらたまらなくって・・・・」


爽子はそんな優しい翔太の気持ちに嬉しそうに微笑んだ。


「それで、明日は何の記念日だったの?」


翔太が何気なく聞いた一言に爽子は瞬間湯沸かし器のように顔を真っ赤にした。


「・・・・?」

「な、何でもないのっ!!/////」

「え??」

「お夕飯・・・・支度があるからっ!!」


ばたばたばたっ〜〜〜〜〜っ


「・・・・・」


思わず目が点になる夫、翔太の姿があった。


今も時々自分の分からないところで恥ずかしそうにしている爽子の姿に遭遇する。


それがまたかわいくって・・・。


「俺って・・・ほんと奥さんに骨抜き・・・・っ」


翔太はほっとしたように笑うと、テレビをつけた。




2月10日・・・・・それは初めての”キス”の記念日


・・・だとは言えず、爽子は真っ赤な顔をしながら料理の続きを始めた。

自分にとっては永遠に特別な日・・・・。


爽子もまた嬉しそうに微笑んだ。




<END>



すい様、一周年おめでとうございます。これからも応援しています。
いつも私の萌をありがとうございます。
sawalove



sawalove様!ありがとうございました
風早の焦りが楽しくて眠る爽子に照れる爽子に
骨抜きになったのはわたくし、翠でございます
素敵なお話ありがとうございました
 

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