Door Of Crimson

□たからもの
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海の立海御殿に帰っても
俺の心は忘れえぬあの人のことを想っていた

尽きることなき恋心



毎日
毎日


王子様の城に通い続けた


あの人が海を見て
笑ったり
切なそうな顔をするたび


俺も嬉しくなったり 悲しんだりした


俺の世界の中心は
あの人にあった


恋煩いをしてから毎日
海の上にばかり行く俺を見かねて


父親は言った
「お前はまだ子供だ!恋など必要ないのだ!
まったく…色気づきおって…たるんどる!」




姉は言った
「人間界なんて恐ろしいところに夢をはせるのは止めたほうがいいだろう 見世物にされる率が90パーセントを超えている」



あぁ


どうしてみんな

こんなにわかってくれないんだろう



俺はこんなに
俺はこんなにも 
あの人のことが好きなのに



人間になって暮らせたら
どんなに幸せか


あの人と暮らしたい


一緒の世界で暮らしたい




そう思うようになった





ここでの暮らしが不満足なんじゃない
地上でのあの人との世界が魅力的すぎるの


水面下の奥深くに住む魔女
助けを求めに行った


あの人なら
あんたのことを理解してくれるはずだよ

何かが囁いた





危ないってことは知っていた
何度か父親からも聞かされた


でも危険を冒してでも行きたい



もう幼くなんかない


危険を冒してでも貫きたい本気の恋だった



「人間の足をあげましょう 
ただその綺麗な足鰭なくなっちゃいますけどいいっすよね?」


頷いた



あの人と
貴方と同じ世界が色がものが
同じ場所で
同じように見ることができるなら


美しいといわれてきた鱗 足鰭なんて
もう
イラナイ



「後…
等価交換なんでその可愛い声もらいますよ
憧れてたんで」


あの人と話せない

どうしよう
一瞬迷ったけれど



でも



「声でいいならどうぞ」

貴方の元へ行きたいから



「忠告っすけど足 薬の副作用で裸足で茨踏んでるような気分になるっス!」




怖くないよ
痛みなんて

声も
鱗も
足鰭も

全部捨てて





逢いに行きます




魔女の呪文が始まると
足が体が喉が
焼けつくように熱くなった


あぁ



これが世界を越える対価なんだ

思い知らされた




自分はこんな禁忌を犯さないと
貴方と同じ世界にいることができないのか
とも思った


悲しかった









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