Door Of Crimson

□なにもない掌からまだ 何かを奪おうとするのは非情ですか?
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「何で何も言わないんスか??」

仁王先輩はただ
こちらを細い切れ長の瞳でにらむだけ

強く 堅く
握りしめた拳は怒りに震えて
目の前でへらへら笑う俺をしっかりと
マークしていた

「丸井――…返してもらおうか」
「あぁ…コレ??」

赤い髪の毛を持って自分の前に引きずり出す


暗くて深い森の中 月の光が
俺の赤い目と先輩の銀の髪 


そして


「えぇい…重いなぁ 相変わらず」

どさっと赤毛の小さな男
丸井先輩を目の前に座らせた

血にまみれて荒い息遣い
真っ赤な俺たちを映しだしていた


大丈夫
まだ死んでないよ


でも仁王先輩はぎらついた眼つきを
やめなかった

「ブン…!!…お前…っ」

仁王先輩の支給武器なのか
殺傷能力の高いトレカフ
それをこちらにしっかりと向けたまま
丸井先輩のほうを見ていた


「まさ…は…るっ」

うっすらと目を開けた丸井先輩が
仁王先輩の名を愛しそうに呼んだ

髪の毛は俺に掴まれたままだけど
懸命に手を伸ばしている


「ブン太…」

生きていることに安心したのか
仁王先輩の表情が緩む


悔しいなぁ――











思えば入学当時
生まれて初めて好きになった幸村部長

線が細くて
折れちゃいそうなのに
一人で凛とコートに立つ強さ

そんな部長に憧れと恋心を抱いていた




でも



幸村部長は俺じゃなくて
丸井先輩が好きだった

まるくて
小さくて
子供みたいで守ってあげたくなるでしょう?

って先輩は言ってた


今では他の人と付き合ってるみたいだけど
丸井先輩に告白して振られたって言っていた


俺は
好きな人 みんな みんな
丸井先輩に取られている



仁王先輩だって――…!!



「くたばるんじゃねぇよ 丸井先輩
てめぇは俺がこの手で殺すからよ!!」
「それ以上丸井に…
ブン太に手を出したら…!!」


体中が熱い
値が沸騰したみたいに騒いで
体中を駆け巡ってる


仁王先輩の言ってることも
丸井先輩の涙も

なにも感じない


感じるのは
殺してやるっていう決意だけ


「どうして…」

俺のほうが絶対好きなのに

「どうして…?」

俺のほうが絶対かわいいのに



どうして
どうして

「どうして
俺じゃなくて全部てめぇなんだよ!!」


ぐさっ


俺の支給武器鎌は丸井先輩の
丸井の手を 足を 首を瞬時に切り裂いた


「ブン太!!」


仁王先輩が駆け寄ってくる

アンナキタナイモノヲ
アナタニサワッテホシクナイ
ダイスキデ
ダイスキデ
コワシテシマイタイクライノアナタニハ


俺は丸井の血の海の中に落ちていた
首と腕を持つと近くにあった湖に落とした

澄んできれいだった湖の水は
赤黒い汚い丸井の血で染まっていった



満足だった
綺麗な丸井を 湖を
あの二人の人生を

俺が
ぶっ壊してやったんだ



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