相棒長編

□第2話背信
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 「あれ?」
ある日、神戸が自宅に帰るといつもと様子が違う事に気が付いた。
(誰かいる。)
そう思った神戸は、明かりを付けずにリビングへと向かった。すると、人影が見える。
「誰だ!!」
明かりを付け、そう叫ぶと覆面を被った男が刃物で襲ってきた。
「強盗未遂及び住居侵入の現行犯で逮捕する。」
なんとか男を説き伏せそう言った瞬間、頭に激痛が走る。
(しまった…。)
そのまま神戸は意識を失った。
 「…君、神戸君!!」
「んっ…。」
神戸が目を覚ますと、目の前には右京がいた。日はだいぶ高くなっている。
「杉下…さん?」
「大丈夫ですか?」
「右京さん、僕…っつう!!」
「頭を殴られているようです。あまり動かない方が良いでしょう。」
「頭を?」
「ええ。今、警察と救急車を呼びました。一体、何があったんですか?」
「そうだ。」
神戸は、昨日の夜の出来事を話始めた。
 「そうでしたか。」
「すみません。油断しました。」
「2人いたのなら仕方ありません。」
右京は神戸を気遣うように言った。
 幸い、神戸の怪我は軽く、念の為1日入院したが翌日には現場検証に立ち合った。どうやら、犯人は屋上からベランダへと侵入したらしい。
 「何か盗まれた物はありますか?」
一通り神戸が事情を説明した後、右京が尋ねた。案の定、伊丹は苦い顔をしている。
「いいえ。」
「人に恨まれるような事は?」
「心当たりはありません。」
「はぁ、ないのかよ。」
上手くやってますから、と落胆する伊丹に神戸はさらりと応えた。
 「あのー、ちょっとよろしいでしょうか?」
そこへ鑑識の米沢が現れた。
「いくつか犯人の物かもしれない髪の毛が見つかりましたので、警部補の髪を1本頂戴してもよろしいでしょうか?」
「あっ、はい。」
「ところで米沢さん。凶器は見つかりましたか?」
「いいえ。恐らく、犯人が持ち去ったのでしょう。」
「なるほど。」
 その時、右京の目にある物が映った。
「神戸君。」
「はい、何でしょう?」
「このドイリーは君の物ですか?シンプルな君の部屋では浮いているようですが。」
一瞬、神戸に動揺が走る。
「ああ、知り合いから貰ったんですよ。」
「女性?」
「…あっ、そうだ。入り口の防犯カメラに犯人が映ってるかもしれませんね。さっ、行きましょう。」
何故かはぐらかす神戸を右京はいぶかしく思った。
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