相棒長編

□第3話冥界からの警告
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 人はまれに、常識では考えられない出来事を体験する事がある。
 その日、神戸はちょっとした雑用が残っていたため、遅くまで特命係の小部屋に残っていた。
「これでよし、と。」
用事を済ませ、帰り支度をしていた時だった。ふいに後ろから人の気配を感じる。変り者の上司も五課の連中も、もうとっくに帰ったはずなのに。
(なんだ?)
恐る恐る振り返ると、そこには目付きが異様に鋭い男が立っていた。
「あっ、あのーどなたですか?」
神戸が声をかけると、その男はニヤリと笑った。
「ようやく気が付いたね。亀山はいつもすぐに気が付いたけど、杉下は鈍感だし、君もなかなか気が付いてくれないから心配したよ。」
「亀山…。」
突然出てきた自分の前任の名前に、神戸は戸惑った。
「杉下警部とお知り合いなんですか?」
「まあね。」
「一体どういう…。」
「それより、杉下に伝えてよ。明日は気を付けろって。亀山がこれ以上友人を失わないためにもね…。」
「あっ、ちょっと。」
「ああ、僕の名前?僕は朝倉禄朗。」
そう言うと、男は姿を消した。
「何なんだよ、一体。それに、朝倉って…。」
その名前に聞き覚えがあった神戸は、背筋が凍り付いた。
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