相棒長編

□第4話スケープゴート
2ページ/6ページ

 右京達は、青梅刑務所の後藤正服役囚と面会した。
「初めてお会いする刑事さんですね。」
「警視庁特命係の杉下と申します。」
「同じく神戸です。」
「で、何の話ですか?」
「ある事件を追っています。」
「それで?」
「その事件はどうやら、15年前の警察庁長官殺害事件が関係しているようなんです。」
後藤の表情が動く。
「15年前の犯人は私です。」
「本当にそうでしょうか?身長など目撃証言とだいぶ違うようですか。」
「…。」
「これはあくまで僕の仮説ですが、あなたはこの事件の犯行を自白するように言われたのではありませんか?刑務所の職員の方にお聞きしましたが、三好刑事がよく訪ねてくるそうですね。」
「15年前の事件を追ってますからね。」
「そうですか。けど、おかしいですねえ。彼はあなたの友人だからと、あの捜査から外されたはずですが。」
「…。」
「それなのに何故、他の捜査員と共にこちらを訪れたのでしょうね。」
これは、状況証拠としては十分だった。
「ふう…。参ったなあ。」
 後藤の証言は次のようなものだった。当時、事件を追っていた捜査員は右京と同じく美知子がスピリットと繋がっていることに気が付いた。スピリットに対して強硬な姿勢をとっていた長官の妻がスピリットと関わりがあることが知られれば一大事。そう判断した刑事部が証言が不十分なのだからと、犯人になるように三好に後藤を説得させたのだ。
 「俺は、友人の頼みを断れなかった。」
後藤は淡々としていた。
 その話を聞いた2人は、すぐさま三好のもとへと向かった。
「あなた方は何もわかっていない。」
三好は怒りを含んだ声で言った。
「あのことが知られれば、犯罪集団のスピリットをつぶせなかったばかりか、警察の権威も失墜だ。」
「だから、あんなことをしましたか。」
「ああ、そうさ。それが、警察が傷つかずにすむ唯一の方法だった。なのに、あなた方は、それを暴いてしまった。」
そう言うと、三好は2人を睨み付けた。
「あなた方もただじゃすみませんよ。」
 翌日、2人は内村に呼び出された。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ