相棒長編

□第1話標的
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 翌日、2人はパーティーが行われる綾瀬家の邸宅へと向っていた。客は5人ほどの小さなパーティーで右京達は午後1時に行くことになっていた。
 「嫌なら断っても良かったんですよ。」
向かう途中の車内で右京は言った。
「別に嫌なんかじゃありませんよ。」
「そうですか…。」
「ほら、もうすぐ着きますよ。」
上手く話をはぐらかされた、と右京は思った。
 「やぁ、特命係のお二方、この度はすみませんなあ。」
綾瀬家に着くと、2人はメイドに広いリビングに案内され、そこで当主の竜一と会った。そこには、妻の春美と娘で中学生の唯、小学生の息子の英一と涼がいた。
 妻の春美は、お客様だから、と子ども達をどこかへ連れていった。
 「可愛いお子さん達ですね。」
「ええ。娘と上の息子は妻の連れ子なのですが、たっぷり愛情を注ぎました。」
右京の言葉に竜一は笑顔で言った。
 そんな竜一に、神戸は内心、苛立っていた。
 「ところで、脅迫状の方を拝見させて頂けないでしょうか?」
「おっと、失礼。これです。」
そこには、今度の誕生日パーティーでお前を殺す、と新聞を切り抜いた文字で書かれていた。
「心当たりは?」
「あるといえばあるし、ないといえばありません。財閥を守るのは大変なんです。」
「なるほど…。」
そう神戸が納得していると、そこへ1人の少女が入ってきた。もう1人の娘で高校生の香織だった。
「あっ…。」
2人の来客に、香織は戸惑っていりようだった。
「こんにちは。」
「お邪魔してます。」
2人がそう言うと、香織も、初めまして、綾瀬香織です、と頭を下げて挨拶した。
「あの、お父様。お手紙が届いていました。」
ところが、竜一は言葉を交わすどころか、目を合わせようともしなかった。
「ここに置いておきますね。」
悲しそうな表情でそう言うと、彼女はその場を立ち去った。
 「彼女は?」
「前妻との子です。」
右京の質問に、竜一は不機嫌そうに答えた。
「何故、あのように冷たくされるのですか?」
「あなた達には関係ありません。」
「失礼しました。ところで、今から周りの方に色々お話を伺ってもよろしいでしょうか?」
「かまいませんよ。」
最も、客が来るのは3時過ぎになってからですが、と竜一は付け加えた。
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