Matt

□ブルーグレイ
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「メロが帰ってきちゃうわ」

「まだこねーだろ」

「でも…今日は夕方には戻るって」

「まだ2時半じゃん」

「だけど…」

「…あー。逆算したら、時間足りないかも…てコト?」

「…」





無言で見上げるあたし。ニヤニヤしてあたしを見下ろすマット。薄汚れたソファに組み敷かれてるあたし。お腹のあたりに、馬乗りになってるマット。








「…じゃ、やめる?」

ゴーグルを着けていない端整な顔が、ふいに無表情になって冷ややかにあたしを見下ろす。





この目がいけない。





この目に、あたしは捕まってしまったんだ。





薄い青色の瞳。
少し灰色を混ぜたような、くすんだ青。



見据えられると、愛しい彼が脳裏に浮かぶ。もっと深い色の瞳を持つ、愛しい愛しい、あたしのメロ。



同じ色を持ってるのに。たしかにメロを思わせるのに。どうしてこの人は、こんなに冷めた目であたしを見るのだろう。





「…やめない」




 
マットの口許が歪み、口角が上がる。





「イケナイ女だな。」

くつくつと喉の奥で笑いながら、肘を折って顔を近付けてくる。重なる唇。徐々に深くなるキスに、吐息をこぼしながらうっすらと目を開けると、マットの目も開いていた。そのまま視線を絡めたままで顔の角度を変え、彼の首に腕を廻した。



メロとの、温かくて、心がほぐれるようなキスと違う。探り合うような、挑戦的で、愛のないキスだ。



マットの唇が耳元へ滑り、耳たぶを噛む。ゾクリ。ぁ、と小さく声を漏らすと、胸の膨らみをシャツごしに包む手。ゆっくり揉みしだかれると、体の芯が熱くなるのが分かる。





「留守中にいつもこんなコトしてるってアイツが知ったらさ…殺されっかな、俺」





あたしのシャツとブラをたくし上げながら、笑いを含んだ声でどうでもよさそうに呟く。





「ン…そう、ね……撃ち殺されちゃえ」

「ひでぇ」










誰にも本気にならないマット。テキトーに、ソツなく、サラリと生きるマット。いつマジになるの?誰になら真剣になるの?
 




胸に埋まる、赤毛の頭をかき抱いた。





メロみたいな、熱っぽい目であたしを見てよ。薄い笑い浮かべてないで、もっと、求めて、もっと、してよ。





試しにさ、あたしに本気になってみてよ。



















(愛してなんかない これは ただ純粋に 興味なの)






end.
 

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