Mello
□フィナーレまであと少し
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「……すまない」
薄く開けた乾いた唇で呟いた無意味な謝罪。相棒が死んだ、この世にはもういない、と、乱れる映像と音声が俺に伝える。
後悔しないために、振り返らず 前だけみつめてここまできた。
みつめる先にLがいて、キラがいて、キラが住むこの島国があった。
事を終えたらこんな狭苦しい国はさっさと出るつもりでいた。
もちろんお前を連れて。
キラのいない世界で俺たちは自由。Lの成し得なかった事を成した俺。もうニアを気にすることもない。白いシーツの中でまどろみながら、お前の髪を撫でよう。
口にはしなかったが そんな近い未来があってもいいんじゃないかと思っていた。
アイシテル
「……フ…」
「…クッ…ハハッ、ハハハ」
自嘲気味な笑いをほとんど溜め息のように口の端から零すと、後から後から漏れ出す。何がおかしい?俺は一体…
「ハハ…」
なにをしている?
「…、……アイシテル…」
昨日の晩、お前に言えなかったことば。今ひとりで口にしてみても虚しいだけだ。
すべて終わったら、言おうと思ってたんだ。ずっと。
でも、
「愛してる」
もう会えない。おそらく。
それに気付いてしまった俺の胸に ジワリ、ジワリ、滲んできたこの感情は きっと紛れもなく“後悔”。
前だけみつめていたのは後悔しないため。もし振り返っていたら押し潰されていたかもしれないから。
そう、俺はいつだって自分を正当化して 強がって生きてきたんだ。それを認めたら負けだ、そう思っていた。
なのに。それなのに、『もう会えない』、この事実だけでこんなにもタガが外れるモンなのか。
認めちまおう。俺は後悔している。自分のやり方が間違っていなかったとは……言えない。
それでもこっちに進む舵を切ったのは他でもないこの俺だ。分かりきってる。だから神を気取った胸糞悪い殺人鬼に中指を立ててフィナーレへ向かおう。
俺のやり方で。
終わらせる。
お前も後から早く来いよ
待っててやる
これっぽっちも信じちゃいない神サマにジーザス。胸に下がるロザリオを握り締め俺はアクセルを深く深く踏み込んだ。
End.