小説
□夢の中
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今日で1年生は終わり。終業式も終わって、今からホームルーム。
「それじゃ、最後にクラスの皆さんに一言ずつ言ってもらいます。まず、明石さんから」
「げっ、私からかぁ。えー、1年間ありがとっ!・・っていっても、来年も同じクラスだしよろしくねー」
「おー来年もよろしくっ」
「よ!バスケットマン」
相変わらずこのクラスは賑やかだ。
この学園に来て1年。
私のせいでお嬢様に嫌な思いをさせた事が少なくない気がする。
だが、このクラスだからこそお嬢様は明るくいられるのだろう。
「・・次は桜咲さん」
考え事をしていて、自分の番が近づいてる事に気づかなかった。
そして、特に感情を入れずに、淡々と話す。
「・・1年間ありがとうございました。来年もよろしくお願いします」
それだけ言うと、席に座る。
私の次の人が終わり、その次の人の番になる。
私はなるべく意識しないようにしたが、そうすればするほど、意識してしまう。
「えっと、みんな1年間ありがと。2年生になってもよろしくな〜♪
・・あ、あと、あの・・うち、なんか悪いことしたんかな。・・ごめんな」
途中から声がわずかに震えた気がした。
「・・このか・・?ちょっと、どうしたの?」
後ろの席の方から、そんな声が聞こえる。
「ん?なんもないえ」
「だって・・んじゃなんで泣いて・・」
「えっ?・・・あや、気づかんかった」
「・・・先生。ちょっと体調良くないみたいなんで、保健室連れてきます」
「・・分かりました。大丈夫ですか?しっかり休んで下さいね」
「ア、アスナ?別にだいじょ・・「ほらっ」
パタン
教室のドアが閉まる音が聞こえた。
少し静寂があったが、またさっきと同じ様に1人1言ずつ話し始めた。
だが、もう耳には入らなかった。
お嬢様が泣いていた。
そして私に謝っていた。
お嬢様は何もしていないのに。
謝らなくてはいけないのは、私の方なのに。
いつのまにかホームルームは終わり、皆帰る準備をしていた。
神楽坂さんも戻っている。
・・お嬢様は・・?
一応、護衛の役割。居場所の確認はしなくては。
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