空想の書

□非凡なる日常
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西の都の上に広がる、星に彩られた美しい夜空。
しかしそれも、太陽が覗けば少しずつグラデーションが掛かっていく。
輝いていた幾千の星々は、明るさから逃げるように姿を隠していった。

鳥のさえずりや部屋に差し込む光に、まるで引かれるように浮上する意識。
うっすらと目を開けたターブルだったが、眩しすぎる陽の光によって、またも目を閉じることになった。
それを何度か繰り返す。
しかし目が完全に慣れる前に、やっと現実に戻りきった意識が、とにかく立とうと提案してきた。
彼はそれに従って、尻尾でバランスをとりながら部屋を出ていった。

「おはようございます」
リビングに顔を出したターブルは、礼儀正しく挨拶をした。
「あら〜ターブルちゃんね、今日は良い天気になりそうよ〜」
ブルマの母親の声だ。テーブルの上には目を見張る量の食事が、所狭しと並べられている。
彼女の姿は、テーブル中央に積まれたパンの山で見えなかった。
「毎日凄い量ですね。全部貴女が作るんですか?」
「そんなことないわ〜、ロボットがないと追いつかないわよ?」
先に作ったお料理が冷めちゃうわ、と続けながらパンの山の向こうから顔を出す。
その時ドアが開き、ベジータが入ってきた。
「兄さん、おはようございます」
「ああ」
弟に目だけ向けて応える。
「まあベジータちゃんもお早いわね〜、それに格好いいわ〜」
夫人を一瞥したベジータだったが、彼女の一言は綺麗にスルーした。
その後、ブルマとグレも起きてきた。それとほぼ同時に、ターブルはトランクスを起こしに行った。

ターブルが、まだ眠そうに目を擦るトランクスを連れて戻ってきた時には既に、皆席に着いていた。
だが席に着くとトランクスも食事を前にして目が覚めたようで、目の前のご馳走にかじりついた。
テーブルの上に並べられた食事は瞬く間に減っていった(主にサイヤ人2名によって)。
「ほいおーはあーっ!!(ごちそうさまーっ!!)ゴクン、美味しかったー!」
最後の料理を頬張って言うトランクスはそれを飲み込むと、いつもと同じ台詞を言う。
当然のことながら残り物など一切無く、パンの代わりとばかりに大量に積み上げられた食器が残った。
「さて、お皿を洗いますかね!」
ブルマが腕まくりをしながら言う。今日は仕事がオフなのだ。
「僕も手伝いますよ」
「あら、悪いわね。じゃあ、食器をあっちに持って行ってくれるかしら?」
「分かりました」

10分程で、テーブルの上も綺麗に片付いた。
そして、最後の皿の山の一部を持って行ったターブルは、コーヒーを持って戻ってきた。
それをソファーに座ったベジータの下に持って行く。
「どうぞ、兄さん。」
「ああ。」
ベジータは差し出されたコーヒーを受け取り、そのすぐ横にターブルが座った。
玄関から、学校へ行くトランクスの「いってきまーす!」という元気な声と、彼を見送る夫人の返事が聞こえた。
それ以外に聞こえるのは皿を洗う音と、ブルマの鼻歌だけという、静かな朝から一日が始まった。
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