御題小説

□Chien11:「不良の彼で5題」
3ページ/6ページ





そして、その日の帰り道。



私は、手のひらにさっき、神楽ちゃんのお兄さんがくれた飴玉を乗せて、その手のひらを見つめていた。

神威さんと名乗った、あの人は私に「よろしく」と言った。
そして、「じゃ、またね」って…これっきりじゃないのか、と思うと、不思議な感覚だった。


今まで、この性格のおかげでいろんなことに巻き込まれてきたけど…

あんな強い人と関わるのは初めてだった。


神楽ちゃんは神威は喧嘩おたくで、弱い奴には興味が無くて、強い人を倒すことを楽しんでる、と言っていた。



『(…だったら、私には興味無いんじゃぁ…??)』

今居る、3年Z組の女子は、比較的強い人が多いけど…私はそんなに強くない。

銀八先生曰く、このクラスで一番まともな人だとか。



『(なのに、何で関わろうとするんだろう…??)』







そんなことを考えていたときに、


「おい、」


という声が聞こえた。

目の前に居たけど、知らない人だったので、無視してそのまま前に進もうとした。









「おい、お前だよ。お前。そこの銀魂高校の女(あま)ァ。」

『…あ、私ですか??』

「おう、お前だ。」

『何か??…あいにく、絆創膏なら2枚しか持ってないですけど、』



明らかに不良っぽかったので、絆創膏だと思ったが、

「誰が絆創膏なんぞ渡せって要求したんだよ!!」

と、シャウトされた。


『あ、違う…じゃあ、ガーゼですか??消毒液ですか??それとも…』

「お前、普段からそんなもん持ち歩いてんのかァァ?!」

『…持ってますよ?ちなみに、包帯もありますけど…。』

「いらねーよ!!要求してねーよ!!どんだけなんだよお前ェェ!!」

『そんなに変ですか??先生からは、この中ではまともなほうって言われるんですが…』

「お前の周り、どんな奴が居るんだよ!!」




すると、「おい、まだかよ…」と言う人が何人もやってきてザワつきはじめる。




『この方々は一体…??』




「お前、昨日、夜兎工の神威に絆創膏渡しただろ?」

『渡しました。顔を切ってらしたので…』

「俺らの番長、血まみれで倒れてたのによォ、そっちはほったらかしか??顔で選んだってか??」



『…あの時は、…えっと…足がすくんで…逃げちゃったんですよね…。』



「あれだろ??神威の女だからだろ??」


人の話を聞いていない不良たちがじりじりと近寄ってくる。



『(怖い…やっぱり護身術くらい、身につけとくべきだったかな…??)』






威)「女の子に手ェ出すんだ。」









威)「何??俺には勝てなかったから、俺に関わった奴に手ェ出そうって訳??」


そこに、あの声が聞こえた。


『神威、さん…。』


威)「どーも。また会ったね。」




神威さんは私に近づくと、「俺が何とかするから、逃げて。」と耳打ちする。

「神威」の名前を大声で呼びながらかかってくる不良たちをすぐに倒す。


逃げろと言われたので、その場を急いで後にした。




先ほどの男は「うちの番長は血まみれだった」と言った。
私が昨日見た傷の限り、あの人が今日ピンピンそてる訳が無い。
って事は、その負けた番長の部下たち…神威さんにとっては「雑魚」という訳だ。


神威は…強い奴を倒すのが趣味なのに、

興味無いはずだから、関わらなきゃいいのに…





傷ひとつ無い神威が、「まだこの近くに居たんだ」と言いながら笑顔を見せる。








威)「夕葉が無事でよかったヨ。」




―喧嘩も笑顔も天下一品―













次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ