その他短編

□落し物
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水溜りの水がはねて、スカートが濡れた。






学校の帰り道の事だった。


『(時間、戻れー!!)』


なんて、無謀な事を思いながら走っている少女が居た。









ただ、それも無謀だとは断言できなかった。



彼女の時計は、目盛が動くようになっていた。

前に課題が終わらずに、
『(時間、戻らないかなー…。)』

なんて思った瞬間に、その目盛を回してみた。


『(これだったら、6時間も戻るじゃん…)』
と思った後に、周りの風景が変わった事。


『あれ…??今、何て…』



その事を、彼女は違和感があるとしか感じていなかった。







『ギリギリ…』

間に合ったと思ったが、バスは通りすぎていく。


『(気づけよ、運転手!!)』




『(次に来るバスは20分後…待てない事も無いけど…)』








『(何か腹立つ!!)』


相当な変わり者の少女は、バスよりも早く走ろうとした。








次のバス停で、そのバスを待つ。

『(今度こそ、間に合った…。)』



…と思ったが、そこでもスルーされそうになった。
少女はさすがに、怒った。



『ちょっ、待ってって!!乗ります!!』

再びバスを追いかけて、車体を叩いた。

それでも運転手が気付くことは無かった。





『わっ!!』

か、かっこ悪い…。



周りの景色も、声も、何もかもがスローモーションだ。




私は、バランスを崩して、車体の方に倒れた。


『(こんな死に方…。)』

最悪だ…。








あの時計が、衝撃で壊れたのか急に、目盛がすごい勢いで回り始めた。




『…あれ??』



この感覚、いつか感じた…。





風が吹き付けて、目さえも開けられない。















『(痛…。)』



そう思った事だけは確かなのだが…






かすかに、目の前に広がった景色は、ビルや道路なんて無くて…





着物を着た男の人が、驚いた表情をしていた。



『(てか、何で、豚…?!)』















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