その他短編

□暗闇の中で。
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総)「あ、すみません…」

『いえ、こちらこそ…』


少し、考え事をしながら歩いていると、女性にぶつかってしまった。

僕の後ろには、3人の隊員。
僕は、いつも通り、京都の見回りだ。



総)「ケホッ…」

『大丈夫ですか??』

総)「大丈夫ですよ。少し風邪のようで…」


その女性は、悲しそうに僕を見ていた。


『…風邪、ですか??』


…何故、見ず知らずの、ただぶつかった人に、そんな事を…
と思いつつも、心配してくださってるのだから、失礼だと思い

総)「風邪だと思うんですが…」

と答えておいた。




『…それなら、一度、お医者様に診ていただいたほうがよろしいかと思います。』



総)「(何なんだ…彼女は…。)」

それが、彼女の第一印象だった。




「おい、娘、隊長に失礼だぞ。」

『…隊長さんなんですか??』


隊員が、「そうだ」と答える。


彼女は『そうですか…』と呟くと、

『尚更、お体を大切になさってください。』

と、笑顔を見せた。




総)「あ、はあ…」

それを言った後、彼女はお辞儀をして、再び人ごみの中へ消えていった。




「何だったんですかねー…」

総)「さあ、何でしょう…。」


「隊長、まだ隊長が優れないんですか??なら、我々が…」


総)「いや、大丈夫ですよ。咳が出る程度です。」





僕は「それに、」と付け足す。

土方さんに気付かれると、仕事をさせていただけないんです。



総)「部屋に引き篭もるのはつまらないですからね。」

と、笑顔を向ければ隊員は納得した。





総)「(…にしても、さっきの女(ひと)…)」


ぶつかった相手が僕で、まだ良かったですね。

最近、この辺りをうろついている不逞浪士ときたら、面倒ですからね。


ぶつかっただけで、突っかかってくるんですから…。





総)「(ま、僕も考え事をしてたから仕方ないんですが…。)」




『(…さっきの方、きっと風邪なんかじゃないですね…。)』




これが、2人の人間が交錯した瞬間だった。








総)「(…何か、見透かされてる気がする…。)」

      ・・
彼女は、僕を見て何を思ったのだろうか…??






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