平安恋歌
□壹話
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春―
撫子の花が庭に咲いている。
優しい日差しが挿している休日の昼間。
今日もお稽古のために呼ばれる。
「夕葉さん。」
『はい、お母様。』
今日はお茶。
明日は華道。
明後日は書道。
それから、お琴。日本舞踊…。
こうして、私は毎日日本の文化に縛られる。
気品のある女性になるように…。
“大和撫子”と呼ばれるような素晴らしい
女性になるように…。
呼ばれて、茶室に向かった時―
『――ッッ』
酷い頭痛が走った。
“私は…見られないンだね…”
泣きながら言う女の人。
私の頬にも涙が伝った―。
“光は将来…”―
『(この女の人は誰…?それに光って…)』
その瞬間視界が揺らぎ、
ドサッ
という音がした。
あぁ…自分が倒れたのだ…。
その感覚はあった。
しかし…その後の記憶は無かった。
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