銀魂長編

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『ご無沙汰しております、晋助様。』


晋)「ああ、」




襖越しに、かすかに声が聞こえた。

本当に、変わってしまった。
でも、どこか変わらないと感じてしまう。



晋)「…開けるなよ。」

『はい、』

顔を見ることは叶わずに、私たちは襖越しで話を続けた。




晋)「よく万斎についてきたな。」

『…はい、晋助様に挨拶だけでもと思いまして。』


晋)「何の挨拶だ。」

『祝言を挙げることになりましたので、“最後の挨拶”を。』

晋)「ああ、」







『晋助様、…さよなら。次に会うときは、…もう…。』

晋)「もう会うことなんて無ェ。」

『そうですね、そう願っております。』



畳に、薄暗いランプの灯り。
襖からこぼれる、晋助様の居る部屋の明かり。


もう一度顔を合わせることは叶わないと分かりながら、
その細い隙間から垣間見えないかと期待する。



でも、これでいいのだろう。

顔を見てしまえば、触れたくなるのかもしれない。


もう愛していない今でも。

後戻り出来なくなるのかもしれない。










『三味線の音色は変わりませんね。』

晋)「変わらなかったら困るんだがな。上達して無ェってことじゃねーか。」


『…そうですね、』


でも、全てが変わり果てたわけじゃない。




晋)「そこで、弾いてくれねーか。」

『…私が、ですか?』

晋)「万斎にもって行かせる。昔はよく弾いてただろ。」

『はい、…雅なものひとつ出来ないようでは、女として恥ずかしいと言われましたから。』







万斎さんが、待ち構えていたように、スッと部屋を隔てた襖とは違うところから入る。


「失礼する」と入ると、私の前に琴を置いた。


調整をすると、すぐに琴の弦を弾いた。
それに合わせて晋助様が三味線の音を奏でる。






『(もし、これが…)』


この瞬間が、攘夷戦争が終わった直後であったのならば…



きっと、運命は大きく変わっていたのに…。





今となってはどうしようもないし、


晋助様を恨む気持ちもないけれど、


どこかそう望んでしまう自分が居る。











一曲弾き終わると、私はすぐに立ち上がった。






『晋助様、…本当に好きでした。』









晋)「ああ。」













『…さよなら、』














その部屋を出ようとした時に、かすかに聞こえた音があった。





















晋)「…俺もだ。」




振り返ると、再び聞こえる。




晋)「………愛してた。」


















きっと気のせいだろうと、私は何も言わずにその部屋を出た。

























晋)「―…はじまりは、みんな同じだった―………、か…。」

















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