銀魂長編
□02
1ページ/4ページ
でも、あの時、キャバクラに勤めると決めたのを今では後悔していない。
だって、あの人と出会ったのはあの場所だから。
新しい自分になろう、なんて稚拙な考えかもしれないが、私は今の私を知らないところに行こうと思った。
少し遠くまで歩いて、「ここで働かせてください」と偶然言った一軒目のお店で、人手が足りないから今日からでも、と言われた。
スナックすまいる、という所に拾ってもらった私は、志村妙という女性とすぐに仲良くなった。
そして、お妙さんを追いかける近藤さん、という警察なのにストーカーをする人の存在も知った。
今まで、仕事をして自分の生計を立てるので精一杯で世の中のことを何も知らなかったかもしれない。
…だから、高杉晋助の安否を知ったのも最近だったのかもしれない、と思った。
同時に貼ってあった桂小太郎のポスターも、あの人らしいと思った。志を曲げない真っ直ぐな彼は変わらない。
そんな時、キャバクラに来た坂田さんとも会った。
坂田さんがゆっくり話したいと言うので、私たちは個室を借りた。
「俺、金無ェから」と焦る坂田さんに、『お金の無い人はこんな所に来ません』と言って無理やり連れて行った。
銀)「お前、こんな所で働いてんのか。」
『…まだ新人ですけどね、』
銀)「ふーん、……アイツ、生きてるから。」
『この間、指名手配のポスターで見ました。』
銀)「それだけ?」
『他に何か?』
銀)「今でも好き、だとか…。無事だと分かっただけでも良かった、とか。」
『私はあの人に捨てられたんですよ?…どうして、無事を願うんですか。今でも想ってなきゃいけないんですか?』
追いかけてはいけない、
…つい、思ってもいない事を口にしてしまった。
意地になっているみたいで、自分が格好悪く感じた。
銀)「別に。…今でも未練タラタラで、帯みたいに引きずってんじゃ無ェかと思ってた。」
『まさか、』
坂田さんは、「そ、」と興味無さそうに呟いた後、「まぁいい、再会祝いだ。今日はちょっと収入あるから、お前にピンドン入れるわ。」とお金を出してくれた。
『ありがとうございます。また指名してくださいね。』
銀)「…じゃあさ、…その坂田さんってのやめにしない?
つか、幼馴染なのに坂田さんっておかしくない?何で?」
『あの頃は、先生に年上を敬うことが大切だと言われていましたから。』
銀)「もう、学び舎も攘夷も関係無ェ。やめよーぜ?そういう堅苦しいの。」
私が、『じゃあ、何とお呼びすれば…』とたずねれば、「銀ちゃんか、銀さん」と返される。
酔って出来上がってしまった坂田さんは、「な?」と言って、私が言われたとおりに呼ぶと、
「よく出来ましたー」なんて言いながら私の頭を撫でた。
そして、小さく呟く。
銀)「こんなこと、あの頃、アイツの前でやってたら、俺怒られてたんだろーな。」
『…もう、関係無いこと、なんですよね?銀さん。』
銀)「おう、」
もう変わったのだ、何もかも。