銀魂長編
□03
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次の日には、「大変だったわね、あの後朝まで一緒だったんですって?」と言われた。
『脚が痺れました。』と苦笑いする。
昨日の片付けをすると、夜まで暇なので、買い物でもしようと思って一人で歩いていた。
町には天人が大きな顔をして歩いていて、それに違和感を感じる者はほとんど居ないのだろう。
あんなに必死で戦ったのは何だったのか、
そして、あんなに苦しい思いをした別れは何だったのか…。
この世界への恨みを完全に消し去るまでにはまだ少し時間がかかりそうだった。
『(でも、昨日は楽しかったな、)』
誰かと居て、楽しいと思えることは最近少なかった気がするから。
攘夷戦争が終わって、攘夷志士が「指名手配の対象」になって、天人を否定する人間はこの世において悪になった。
我が国を思って、命を懸けて戦った人たちを、幕府はすぐに敵にした。
私の幼馴染の3人のうち2人は指名手配犯。
晋助様も桂さんも嫌いになれないけど、
今も、変わらず大好きな幼馴染だけど、
周りに知られたら、離れて行く人も居るんだろうな、って。
怖くなる。
『(…きっと、)』
楽しかった時間も、それを知れば終わってしまうのだろう。
今はどうしているのか知らない彼らのことを問い詰められる。
攘夷戦争直後の状態に戻るのはもう嫌だった。
立ち止まって、
『(彼らは、真選組、なんだから…。)』
何もやましい事は無いのだから、言わなくてもいいだろう。
私に、攘夷の思想なんて無いし、
この世界を愛すことは出来なくても、破壊したいとは思わない。
天人に違和感を感じるけれど、…確かに関わりたくは無いけれど、攘夷とは思わない。
だから、大丈夫…。
と思いつつ、不安になる。
銀)「何してんだ?」
『…ッ、……銀さん。』
銀)「散歩か何か??」
『いや、買い物にでも行こうかと…。銀さんはどうされたんですか??』
銀)「家に居ても五月蝿いし、仕事無いし、今日は月曜日だからジャンプでも買いに行こうかな、って。」
『ジャンプって何ですか?』
銀)「週間少年ジャンプだよ!!!知らないの?!お前人生の3分の2くらい損してるよ!!」
『(私、かなり損してるみたい…。)』
その後しばらく銀さんはジャンプの魅力について語っていた。全く分からなかったけれど。
まだまだ知らないことがたくさんある。
町に出てきて日が経っていないとはいえ、水商売をするからにはお客様の話が分かるようにしなければ、と改めて思った。
『あ、』
銀・十)「「げ、」」
私が前方から来る土方様を見た瞬間、彼もこちらに気づいたらしく嫌な顔をする。
『土方様、お仕事ですか?』
十)「ああ、警察だからな。市中見回りだ。」
銀)「とか言って、サボってんだろ?総一郎くん見たよ、さっき。公園のベンチで。」
十)「………、仕事だ。」
銀)「寝るのがですかぁ〜?」
十)「………。」
沖田さんは、またサボって寝ていたらしい。
銀さんは、「チンピラ警察」「税金泥棒」と言葉を並べる。
『銀さん、土方様は一生懸命お仕事をなさってるんですから、そんな風に責めるのはおかしいです。』
銀)「…んだよ、コイツのこと様付け?!神様か何か?!」
『お客様は神様です。』←
銀)「…それ、ちょっと違う気がするけど、」
十)「俺、行くわ。お前と違って仕事なんでな。」
銀)「わー、嫌味な警察だなァ、そんなんで市民を守れるんですかー?!」
十)「いい加減にしろ!!公務執行妨害でしょっぴくぞ!!!」
銀)「……何笑ってんだよ、夕葉。」
『あ、ごめんなさい。だって2人があまりにも似てるから。仲がよろしいんですね。』
「「コイツと一緒にすんな!!!」」
いつかの晋助様と銀さんの如く息もぴったり。
私がまた笑うと、2人は「真似してんじゃねーよ!!」「テメェだろーが!!」と言い合いをはじめる。
そして私は、こんな時間が続くのを願っていた。