銀魂長編
□07
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あの後、フラフラ歩いていたら、沖田さんに気をつけて帰るよう、言われた。
今日は絶対一人になることが無いように、
あれだけ顔が割れてりゃ、襲われても仕方ねェ。
帰りも、人通りが多い場所を通りなせェ、
だそうだ。
泣きそうだったのをこらえて歩いていたので、話しかけられた時はどうしようかと思った。
今日の私はおかしい。
…あんな晋助様を見たから、と土方様に急におかしな言動を見せた。
ただ、簪が壊れただけで、仕方ないと分かっているのにこんなに悲しい。
沖田さんは、気を使ってくれたのだろう。
「それじゃあ、俺ァ、この後のこともあるんで。忠告はしやしたぜ?」
とだけ言って去っていった。
でも、お店に戻るまで、後ろに居てくれた事は何となくだけれど分かった。
その夜、体調が悪いと嘘をついてお店を休んでしまった。
もし、心配して土方様が来ていたら申し訳ないが、あの場に笑顔で居られる自信も無かった。
お店の人たちは、ゆっくり寝て休むようにと言ってくれた。
ベッドに寝転んで割れた簪を見つめる。
思い出だけは美しいまま、なんて私の我儘だったのだろう。
前に進むためには、きっと壊さなきゃいけないものだった。
そう思いながらも、涙があふれる。
私は、泣き疲れたのか、簪を手にしたまま眠りに落ちていた。
翌日の午後…、落ち込んだ時は、神楽ちゃん達に会うに限る。大量にお団子を買って、万事屋に行こうと思った。
お団子を買ってから、また昔を思い出す。
いつもおやつは取り合いだったのだ。
晋)「おい、天パ!!自分だけデカい団子とるんじゃねー!!」
銀)「ケチケチすんなよ!どうせお前は対して甘いモン好きじゃねーだろ!!」
小)「お前たちいい加減にしないか。団子ごときで…」
銀)「団子ごときだァ?!じゃあ、ヅラの分は俺が食う。」
小)「それとこれとは話が別だ!!」
争奪戦の後で、晋助様はいつも私にそっと団子を差し出す。
晋)「ほら、お前の分。」
『…あ、ありがとうございます。』
晋)「お前はチビで、すぐ負けちまうからな。でも、俺が守るって決めたから。」
そう言って、少し困ったように笑うあなたが…
『(……大好きだった、)』
何かに触れる度、優しい思い出がよみがえる。
私はいつになったら過去から解放されるのだろう。
銀さんも、桂さんも、…あの人も、過去に縛られる新たな道を向いて生きているというのに…。
青空を緑の間を涼やかな風が抜けていく。
河原で座り込んで、また堂々巡りの考え事。
人生の半分くらいを、あの人にとらわれて生きて来た気がする。
離れてからだって、また会う日を夢見ていた。
再会したというのに、何も出来なくて、悩まされて。
そろそろ解放されても良い頃だろう。
『(何で、そう単純に前を向けないんだろう…)』
この世界を守りたい。壊してからじゃなくても、きっと変える方法はあるはずなんだ。
それを、人々が探さないだけで。
なのに、何故いつも傷つけあうことでしか変革できないのだろう…。
「おねーさん、何か考え事?」
『はい、世界平和について考えてました。』
「平和???何それ、俺が一番嫌いなものだなー…。」
自然と返事をしていたけれど、この人は一体誰だろう。
平和ボケしてそうな笑顔で、ピンク色の髪を三つ編みにした男の人が、当たり前のように私の隣に座った。