その他短編
□夢で学ぶ古典2
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〜いつの帝の時であったでしょうか、
(知らないな、…将軍は徳川茂茂だったけど。)
女御や更衣がたくさんお仕えしている中に、
とても強い訳では無いけれども、団長の寵愛を受ける方が居りました。〜
ここ、春雨の中には、夜兎族も存在する。
夜兎族の強い戦闘の血を受け継ぐべく、中でも強い幹部たちには女が用意された。
夜兎族である、いわゆる“強い女”は身分が上で、正式な妻となった者が「中宮」、そして他の愛人たちは「女御」と称された。
人間と夜兎族の間に生まれた女や、人間である、いわゆる“弱い女”は、「更衣」という低い身分にあたった。
中でも、夕葉は純粋な人間であった。
つまり、「更衣」と呼ばれる女の一人で、春雨最強の戦闘部隊・第七師団の団長の神威に仕えていた。
威)「夕葉!!」
『神威様、…お仕事はどうなされたのですか??』
威)「阿伏兎に任せてきた。」
『でも、団長様なのですから、ご自分の仕事はご自分でなさらないと…』
夕葉はハッとして、『出すぎた事を申しまして…』と言うが、その口を神威がふさぐ。
唇が離れると、神威は「真っ赤で可愛い」とからかうように笑った。
威)「夕葉に会いたかったから、仕事放り出して来ちゃった。」
夕葉は更に頬を赤くする。
威)「…でも、まぁ、夕葉がそう言うなら…仕方ないか。真面目に仕事してくるヨ。」
『はい、お仕事頑張ってください。神威様。』
夕葉の笑顔が嬉しくて、神威も笑顔を見せる。
威)「頑張ったら、夕葉が癒してネ?」
なんて言いながら顔を近づけた後、神威は満足気に笑ってから去っていった。
神威の後姿が見えなくなるまで、笑顔で見送る夕葉の後ろから女たちの声が聞こえる。
「神威様、あんな子のどこがいいのかしら…。」
「ただの人間なのに…。」
「あんな子に、強いお子が生まれるわけが無いわ。」
「私なんて、もう神威様と何ヶ月ご無沙汰か…。」
入ったときから、「私こそが神威様のお子を生むのだ」と志の高いものからは目障りだと、ねたまれた。
そして、同じく更衣の身分である者、数は少ないがそれよりも下の身分の者は、気がかりでならない。
それは、神威が更衣を気に入るのがまれなためであった。
確かに、将来ある子供を殺すのは嫌う。
強い子供を生みそうな女も殺さない。
そんな神威でも、弱い者には興味が無い。
弱い女は、容赦なく殺すのが以前の神威であった。
つまり、自分たちには可能性が無いのである。
そして、女御たちは身分がある。
どんなに神威には愛されていなくても、身分では夕葉に勝っている。
そう思える女御たちとは違い、他の更衣たちには何も無いのであった。
そして、そんな周りからのストレスであろうか。
彼女は次第に体調を崩し、実家に篭り気味になってしまう。
『すみません、お暇をいただきます。』
威)「何で?!俺の側に居てくれないの?」
『…体調がすぐれないんです。こんな調子じゃ、神威様を満足させる自信がありません。お願いします。』
神威は黙った後、「分かった」と返事をした。
しかし、そうやって夕葉が顔を見せなくなればなるほどに、彼女への思いは募っていく。
彼女のことばかりが、心に浮かぶ。
威)「(夕葉…、夕葉、夕葉…。)」
威)「夕葉…。」
威)「(会いたいよ、夕葉…。)」
威)「(こんなに会えないと…俺、おかしくなりそうだ…。早く、会いたい。君に…。)」
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