その他短編
□どんなあなたも好きでいると言ってくれる君が宇宙の誰よりも愛おしい。
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3ヶ月程前、『よろしくお願い致します』と丁寧に頭を下げた女が最近気になっている。
新人の女中である、明日奈 夕葉だ。
ところで最近、大問題が起こった。
確かに、何が起こったのかは知らせた。
真選組の一員として知らせておかなければと考えたことのみを話した。
つまり、女中であるがために多くは知らされていないのだ。
特に…
特に…
あれだけは…
あのことだけは知らせてはならねェ!!!
俺の部屋に並んだフィギュアを速攻でダンボールに乱雑にしまった。
何が、「保存用と観賞用と実用用」だ…
つか実用用って何だ!!!!!
1つにつき3体あるフィギュアが憎くて仕方無い。
十)「……何とか間に合ったな、」
俺が、あの思い出したくもない状態だった時は、近藤さんが気ィきかせてくれたらしいが…
『失礼致します。土方副長はいらっしゃいますか?夕葉です。お茶をお持ちしました。』
十)「おう、入れ。」
スーッと襖を開け、丁寧にお茶を運ぶ夕葉の姿。
それさえも美しく感じる俺は、どこか可笑しいんだろう。
『副長、お仕事は捗っていらっしゃいますか?今日は随分と片付いてますけど…』
十)「ああ、…まあ、あんな事件も起こったばっかりだからな。
資料も膨大な数になったし、これを機に整理でもしようかと思ってよぉ、」
『そうですか。お疲れ様です。ご迷惑でなければ私もお手伝いしますので、出来ることがあれば何でもお申し付けくださいね。』
十)「お、おう…ありがとよ、」
コイツは、毎日決まった時間に俺のためにお茶を運んでくる。
だから、何としてもこの時間に間に合わせなければならなかったのだ。(あれ、何でだ?)
総)「あれー、副長室を整理してたんで、空くのかと思ってやした。
チッ、まだ俺に副長の座を譲る気が無いんですかィ??さっさと消えろ土方。」
そこにアイマスクを上げながらフラフラと歩いてきた男。
『沖田隊長、お疲れ様です。』と夕葉は言うが、総悟のヤツはその表情からして恐らくサボって寝てたんだろう。
まあ、そんなのはいつもの事だけどな。
十)「呼び捨てすんじゃねェ!!敬称付けろや!!つか誰がテメェに譲るか!!
テメェは一生一番隊隊長で十分だ!!!つか仕事しねェんなら降格してやろーか?!」
そんな様子を見て、あいつはクスクス笑う。
いつも丁寧なクセに、笑うときは無邪気だ。
総)「どーせ、夕葉に引かれないよう…
十)「さっさと仕事しろや!!!!」
総)「図星じゃないですかィ、…で、あの数々のフィギュ
十)「さっさと仕事しろって言ってんのが聞こえねぇのか!!!!!」
夕葉に『そろそろお仕事に戻ったほうがいいんじゃないですか?』と笑顔で言われると勝てない総悟。
その理由は、単純なものだ。
総悟は夕葉のことを姉のように慕っている。
総悟は姉と重ねているのか、夕葉と俺が接触するのを嫌う。
だからどうこうって訳じゃないが…
…ただ、夕葉にだけは嫌われたくは無ェんだよ。
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