その他短編
□どんなあなたも好きでいると言ってくれる君が宇宙の誰よりも愛おしい。
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何とか総悟が言うのを阻止した俺は、無理矢理大声を出したせいで喉が渇いた。
『お茶、持ってきますね。』
俺は「おう、」と返事をして、彼女は笑顔を見せると既に飲み干した俺の湯飲みを持って立つ去った。
彼女が立ち去るとすぐに、タバコを加える。
ライターを取り出して、結局脱落したように手を下ろした。
ライターに火はつけないまま、一度加えたタバコもしまった。
夕葉は、一般的に見ても美人だ。
…可愛いに近いと思うが。
屯所に来た時もヤローどもに質問攻めだった。
聞こえてきた中二みたいな質問が頭に残っている。
「夕葉ちゃんって彼氏とか居ンの??」
『居ないですよ。』
「え、じゃあ好みのタイプは?」
『そうですね…、何かに一生懸命な人ですね。』
「じゃあ、結婚するなら?!」
『そりゃあ、現実的には…タバコを吸わない人ですね。』
あんなに可愛い笑顔で残酷だ。
初めて、「おい、副長室に茶ァ持ってきてくれ」と頼んだ時、『はい』と言いながら持ってきたのは違う女中だった。
後で、「お前に頼んだのに何で来なかった」と聞くと、彼女は笑顔のまま
『副流煙でも肺癌の可能性は高まるんですよ。私タバコが嫌いなんです。』
と笑顔で言ったのだった。
その上、『だから副長さんにはあまり近づきたくありません』とまで言われた。
挨拶の時は馬鹿みたいに丁寧だったクセに何なんだ、コイツは…!!!
「切腹だ!!」って言ってやりたかったが、女中だしな…。
そんな事を言ったら、近藤さんが「何てこと言うんだトシー!!!」と泣くに決まってる。
…という衝撃的な出会いをしながらも、何故アイツに想いを寄せてんのかは不明だ。
少しタバコを減らせばすぐ気づいた。
『そのほうが健康でいいじゃないですか。いっそ禁煙したらいいんじゃないですか?』
十)「あ?ンなん、無理に決まってんだろ。つか、お前のためじゃ無ェからな。」
『そんな事言ってないじゃないですか。それより、副長さんは健康で居ないと。
あなたが居なくなったらどうするんですか?近藤さんだけじゃ真選組はまとまりませんよ。』
俺がアイツが気になり始めたのは、この瞬間だったのだろうか。
それからというもの、…実はタバコの本数は今までの半分になっていたりもする。
今だって、これからもう一度夕葉が来ると思うとタバコは吸え無ェ。
「こんなニコチン野郎に近づいたら癌になりやすぜィ。」と言う総悟を思い出してイラッとした。
夕葉も、『癌は嫌ですね、』と同意するあたりがまた腹立たしい。
先ほどフィギュアを無理矢理詰め込んだ押入れを見てため息が出た。
十)「(バレたら、俺が切腹かもしれねー。)」
夕葉は基本的に笑顔を絶やさない。
しかし、毒舌だ。
『副長、お茶をお持ちしました。』
十)「おう、」
『どうぞ。沖田隊長は相変わらず庭でサボってましたけどね。』
十)「総悟ォォォ!?!?!?」
とりあえず、コイツにはバレたくない事実。
妖刀のせいとはいえ、俺にはもう一つの人格がある。
…通称・トッシーと呼ばれている「アニメオタク」の人格だ。
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