その他短編

□新時代
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『緋村さん、出かけてきます。』


剣)「ああ。」





ここは幕末―京都。


緋村さんは、女の格好をして出て行く私に「気をつけて」と付け足した。




私は、維新志士。



『……。』

そっと、隠し持った剣を握りしめる。




私の父が維新志士だった。

その父は、2ヶ月前に亡くなった。



『(お父さんの気持ち、私が受け継ぐから…。)』



「夕葉、新時代のために、お父さんは闘うぞー」

『お父さん、スゴイねー』


そんなお父さんを、すごく尊敬していたから…。

家に居るお母さんの反対を押し切り、妹に母の事をお願いして…ここにやってきた。



私は、お父さんの思いを受け継いで、この国を変える。





『(新撰組…。)』

お父さんを殺した人たち。




最初、その人たちを恨んでいた。

でも、その内…恨めなくなってた。




私だって、新撰組の事言えない。

同じように、人を殺しているんだから。




今でも思い出す。血に染まる、服…手…顔…カラダ…。


私は、今、汚れた人間だ。
もう、帰るつもりは無かった。


無理に出て行ったから、母達とも連絡を取ってないし…





『(孤独っぽい…。)』


緋村さんはいい人だし、私を気にかけてくれるけど…

何故か、1枚ベールに包まれたような…何か隠しているような気がする。




時に寂しくなる。
自分で選んだ道だったのに…。




『(お父さんが目指す新時代は、こうやって作られていくのですか…??)』






空を見上げる。

お父さんが居るはずではないけれど…。







「団子でも一緒にどうです??」

『…??』


「美味しいですよ。」


笑顔の青年が私に1本の団子を持ってきた。




『…あ、ありがとうございます。』



驚いたが、勢いで受け取ってしまった。



『あの、お金…。』

「僕のおごりです。」



…変な人。


最初は、お店の人が押し付けてお金を取ろうとしていたのかと思った。



『…美味しい。』




私は、その人に、もう1度会いたいと思った。








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