その他短編

□いつもの笑顔で、
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歳)「お前は、総司と一緒に江戸に行け。」



意味が分からなかった。

いつも、その場所に居なかった私は知らなかった。



『何で、ですか…??』

私は、どうして沖田先生が土方副長達と一緒じゃないかが不思議で仕方なかった。

歳)「総司は、病気なんだ。」

私は耳を疑った。私は知らなかったのだ。


試衛館時代の沖田先生は、いつも剣を振るっていて…
それに、たまにサボって子供と遊んだり、団子を食べたり…


『嘘、ですよね…??』

歳)「お前は今の総司を見ていないから…。」

首を横に振った後でそう告げられた。


土方副長は、私に今後沖田先生の面倒を見させるために私を、この京に呼んだようだった。


歳)「総司を頼んだ。」

そう言われたら、私は「はい」という返事しか出来なかった。




『それでは失礼します。』

三本指をつき、そっと頭を下げて障子を閉めた。

土方副長が選んだのが、どうして私だったのか分からないけれど…。

その不思議な感覚を思い巡らせて、私は沖田先生の元へと向かった。


凛として早足をしていても、

―お前は今の総司を見ていないから…。


そう言った、土方副長の声が頭に残った。

今の沖田先生がどんな姿をしているというのだろうか…??



それなりの覚悟が必要なのだろうか。
恐怖で、指先は震えていた。





沖田先生が居るという近藤局長の妾さんの家に到着した。

家の方に案内されて、廊下を歩いていると寂しそうに下を俯いて襖を閉める男性が居た。


『近藤局長、ご無沙汰しております。お久しぶりです。』

深々とお辞儀をすれば、局長は副長と同じく「総司を頼んだ。」と言った。

その表情は寂しそうで、何となく胸を締め付けられた。


その表情からも、沖田先生の先はそう長くは無い事が読み取れた。




『…はい。』




襖を開ける、…そこには、私の知らない痩せた沖田先生が居た。















歳)「…局長、来てたのか。」

勇)「ああ…。」


沈黙の後、局長の方が口を開いた。

勇)「…なぁ、歳。」

土方副長は何も言わずに、顔を上げる。

勇)「これでいいのかな…??」

歳)「2人のためだろ。」

勇)「…でも、夕葉には残酷すぎないか…??
あんなに慕ってきた総司の最期をみとるなんて…。」


歳)「…でも、互いを思うなら、それを互いに望んでるんじゃねーか??
それに、これは俺達がどうこう言う事じゃねえ。総司の希望だ。」







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