その他短編

□青空と月―前編―
2ページ/10ページ



文久元年、日野にて、私が生まれた。
名は「明日奈 夕葉」。


井上源三郎、沖田総司の親族にあたり、父もまた近藤勇の兄弟子であった。

子供が好きな沖田総司は、私を気に入ってくださったそうだ。


物心ついた頃には、沖田先生が側に居た。


彼らが京に出向く時、私の父も共に出向いた。
これが、文久3年の事なので、私は2歳。
もちろん、私は記憶が無いが、見送る際に私は
父よりも沖田先生にひっついて離れなかったらしい。


父は、きっと残念だっただろうが…
その頃から、私は沖田先生になついていたようだ。

その後も、数日泣き止まない。寝る以外には、泣き続ける。

そんな私に、半ば呆れた母親は、父や沖田先生の居る京都へ向かう事にしたそうだ。


そして、数日遅れて京都に着き、私は、幼い時代を
沖田先生や壬生寺に居た子供と過ごす事になる。




『おきたせんせー!!』

総)「夕葉、どうした??」

『遊ぼ。』

総司は、困った表情をして、「ごめん」と言った。


そこにひょっこり顔を出した父が「また来たのか。」と言った。

新撰組の決まりの中に、妻子や妾を住まわせる場所も決まっていたので父とは別居だった。
その頃の自分には、全く意味が分からなかったものだ。

『(毎日来るんだから関係ないのに…)』
と、よく思う。


父には、何度も「沖田先生は、たくさんお仕事があるんだ。」と言われたものだ。


父)「沖田先生の邪魔をしたらいけないよ。」

『そっかー…』


沖田先生、お仕事なら、ちゃんと言ってくれればいいのに…。



総)「僕も仕事より夕葉と遊びたいなー」

そう、口を尖らせて言ってくれる沖田先生が好きだった。
何だか、本気か冗談かは分からなかったが…
(多分、この人の事だから冗談だったんだろうが。)

ただ…今思っても、冗談だったとしても、この人が好きだった。
そう言ってもらったら、自惚れかもしれないが、先生が私を好きでいてくれる気がして…

幼心ながらに、すごく嬉しかったのだった。




途中から、沖田先生と遊ぶ時間は段々と減っていくのだが…


『えー…今日も、沖田先生居ないのー??』

父)「仕方ないだろ。沖田先生は一番隊組長なんだぞ??」
稽古中の父は竹刀を持って言った。

『そりゃ、そうだけどさー…。』

縁側で足をブラつかせていたら、原田さんや永倉さんにもからかわれた。




左)「そりゃ、総司だって、こんな小さい女よりも、…なぁ??」

新)「おう、あれでも男だからな。そりゃ、女性がいいよなー??」


父)「永倉さん、原田さん、うちの娘に変な事教えないでくださいよ??」
と父は言っていたが、当時の私には意味不明。



ただ、『別に、沖田先生と遊べたらそれでいいもん。』と言えば、

新)「へーえ。」

左)「じゃあ、総司が他の女抱いてても…??」

と言った時には流石に父は怒っていた。




『……???』




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ