その他短編
□青空と月―後編―
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宗次郎と共に志々雄さんのところへ行くと、宗次郎は刀をダメにしてしまった事を謝った。
宗)「すみません志々雄さん、預かった刀そんなにしちゃって…。
でも、僕が悪いんじゃありませんよ。怒るんなら緋村さんを怒ってくださいね。」
宗次郎…。
志)「名刀長曾禰虎徹を、逆刃刀でここまで壊すとは…。少し甘く見ていたか…。」
宗)「虎徹??」
由美さんが疑問符を浮かべる宗次郎に「腕は立っても、頭の方はサッパリね。」と呆れた様子を見せた。
『名刀…長曾禰虎徹、…大業物三十一工の一つで、
名のある剣客なら喉から手が出るほど欲しがる一品…でしたよね??』
志々雄さんは一瞬驚いたが、「その通りだ。流石だな。」と言う。
『(近藤さんと同じだ…。)』
志)「宗次郎、一つ頼まれてくれねぇか」
志々雄さんは、傷ついた刀を見て呟いた。
宗)「弁償以外ならなんなりと。」
志)「十本刀を全員ただちに京都に集結させるんだ。」
由美さんが「十本刀を…??」と聞き返す。
緋村剣心に眠る人斬り抜刀斎を意地でも引きずり出したくなった―…
志々雄さんが、ニヤリと微笑を浮かべた。
『…宗次郎、またどっか行くの…??』
宗)「まあ、名刀をダメにしちゃいましたからねー…^^;」
『…そう、だよね…。』
宗次郎は「なるべく早く帰るから」と告げてそのまま去って行こうとする。
『はい、お気をつけて…。』
宗次郎は、驚いた表情をした。
今の私は、周りから見れば、夫を思う妻に見えたそうだ。
宗次郎は、「はい。」と言って、私の額にそっと口付けを落とした。
『宗次郎…。』
私は立ち去ろうとする宗次郎の腕をつかむと、自ら唇を重ねた。
『待ってるから…。』
宗)「大丈夫ですよ。十本刀を呼んでくるだけですから。」
『…分かってるけど、』
この不安を、私は前にも感じた事がある。
宗)「すぐ戻ります。今度は甘味屋に立ち寄ったりしませんから。」
『……前の時は立ち寄ったの??』
宗次郎は笑顔で誤魔化して去って行った。
志)「そんな束縛すんなよ。」
『束縛じゃ……束縛、か…。』
由)「いいじゃないですか。愛故ですよ。」
由美さんは微笑ましいというように、私を見た。
志)「十本刀が揃い次第、国盗りを本格的に開始する。覚悟しておけよ。」
『はい…。』
そう返事をした後に、私は宗次郎が去って行った方向を向く。
『(宗次郎…。大好き…。)』
志々雄さんに「行くぞ。」と言われて、私は後を追った。
そして、やはり数日間、私はほとんど誰とも会話を交わさなかった。
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