その他短編

□青空と月―後編―
2ページ/8ページ





宗次郎と共に志々雄さんのところへ行くと、宗次郎は刀をダメにしてしまった事を謝った。


宗)「すみません志々雄さん、預かった刀そんなにしちゃって…。
でも、僕が悪いんじゃありませんよ。怒るんなら緋村さんを怒ってくださいね。」

宗次郎…。


志)「名刀長曾禰虎徹を、逆刃刀でここまで壊すとは…。少し甘く見ていたか…。」

宗)「虎徹??」

由美さんが疑問符を浮かべる宗次郎に「腕は立っても、頭の方はサッパリね。」と呆れた様子を見せた。


『名刀…長曾禰虎徹、…大業物三十一工の一つで、
名のある剣客なら喉から手が出るほど欲しがる一品…でしたよね??』


志々雄さんは一瞬驚いたが、「その通りだ。流石だな。」と言う。

『(近藤さんと同じだ…。)』



志)「宗次郎、一つ頼まれてくれねぇか」

志々雄さんは、傷ついた刀を見て呟いた。

宗)「弁償以外ならなんなりと。」

志)「十本刀を全員ただちに京都に集結させるんだ。」


由美さんが「十本刀を…??」と聞き返す。

緋村剣心に眠る人斬り抜刀斎を意地でも引きずり出したくなった―…

志々雄さんが、ニヤリと微笑を浮かべた。



『…宗次郎、またどっか行くの…??』

宗)「まあ、名刀をダメにしちゃいましたからねー…^^;」

『…そう、だよね…。』


宗次郎は「なるべく早く帰るから」と告げてそのまま去って行こうとする。


『はい、お気をつけて…。』

宗次郎は、驚いた表情をした。

今の私は、周りから見れば、夫を思う妻に見えたそうだ。



宗次郎は、「はい。」と言って、私の額にそっと口付けを落とした。

『宗次郎…。』


私は立ち去ろうとする宗次郎の腕をつかむと、自ら唇を重ねた。


『待ってるから…。』

宗)「大丈夫ですよ。十本刀を呼んでくるだけですから。」

『…分かってるけど、』

この不安を、私は前にも感じた事がある。



宗)「すぐ戻ります。今度は甘味屋に立ち寄ったりしませんから。」

『……前の時は立ち寄ったの??』


宗次郎は笑顔で誤魔化して去って行った。

志)「そんな束縛すんなよ。」

『束縛じゃ……束縛、か…。』


由)「いいじゃないですか。愛故ですよ。」

由美さんは微笑ましいというように、私を見た。


志)「十本刀が揃い次第、国盗りを本格的に開始する。覚悟しておけよ。」



『はい…。』


そう返事をした後に、私は宗次郎が去って行った方向を向く。


『(宗次郎…。大好き…。)』


志々雄さんに「行くぞ。」と言われて、私は後を追った。

そして、やはり数日間、私はほとんど誰とも会話を交わさなかった。








次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ