その他短編

□夢で学ぶ古典
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1.竹取物語






今宵、満月が昇る。雲ひとつなく、美しい月が浮かぶ。


船上からは、涼しげな波の音が聞こえ、何とも風情があるものだと感じた。


水辺には、ほのかに光るものが飛んでいる…蛍だ。






その男は、キセルを吹き煙を立ち上らせながら呟いた。







「…今日は、かぐや姫でも昇って行きそうな夜だな。」





再びキセルを咥え、大きな満月を見上げたとき、男の名前を呼ぶ声がした。










『…晋助様。』


漆黒の長い髪、色白な肌と、端整な顔立ち。
そして、それに似合う華やかな赤い着物。



「どうした、」

彼女の振り向き、男は問う。


彼女は何も言わずに、男に寄り添った。




『いえ、何でもありません。ただ、月が綺麗だと思って出てきただけです。』




「…なァ、」


『何ですか??晋助様。』















「月に帰るなよ。」












女はクスクスと笑う。




『かぐや姫ですか??』







「お前は俺から離れるな。」





『離れませんよ、ずっと、…あなたが望む限り。』





「俺は、お前が嫌だと言っても離れねェし、放さねェ。」




『…絶対に放さないでくださいね。』




「ああ。」

















―俺のかぐや姫―


(たとえ何度、貴公子が奪おうとしても、)

(何度、月の使いが奪おうとしても、)

(その漆黒の髪も、色白の肌も、全て俺のもの)













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