御題小説

□確かに恋だった:「遅すぎた初恋を語る」
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―こんなことを言えば、君は笑うかもしれないネ。―









―これは、確かに…俺の初恋だった…。―












彼女が春雨に入って、数日。

初の任務を終えて、阿伏兎に報告をする彼女の姿を見たのが初めてだった。




いつもよりも高鳴る気持ち。

戦う時や、誰かを殺す時とは全然違う。





何なんだろう…。

この気持ちは、一体…。







『阿伏兎さん、こちらの方は、…団長さんで間違えないですか??』

丁寧に指先をそろえて、俺のほうを指す。


阿)「ああ。挨拶しとけ。これでも団長だ。」


威)「これでもって何だヨ。失礼だなァ。」


阿)「団長が大して仕事してくれないからだよ…。」

阿伏兎はため息をつきながら言う。



…でも、そんな事より…、


自分が今、おかしく無いだろうか??


この胸の音が彼女に聞こえていないだろうか??




そうやって、いつもなら何とも無い、感じたことの無いものを気にする俺が居る。






『先日からこちらに配属されました、夕葉と申します。』

彼女は笑顔を向ける。

笑顔…、偽りの笑顔じゃない、そう感じた。




分かるんだ…、俺自身が、いつも偽りの笑顔だからさ…。





『お世話になると思いますので、よろしくお願いします。』


胸に思いはあふれてるはず。
可愛いね、とか…、強いのか、とか…色々言いたいことはあるのに…


威)「ああ、」

この一言を発するので精一杯だった。




阿)「団長のお世話をしてほしいくらいだがな、」


阿伏兎を殴る気にもならない。






俺、どうしちゃったんだろう…??













―こんなに誰かを愛しいと思ったのは初めてだった。正直、初恋だった。―










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