御題小説
□Chien11:「不良の彼で5題」
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ザァァ…―
大雨が降っていた。
憂鬱な気分のままピンクの傘をさして歩いていた私の前に、真っ赤な液体が見えた。
薄暗い路地の側、
少し奥まったビルの隙間から流れてきたように思えた。
あまり関わっていいものとは思えなかった。
でも、放っておくわけにも行かない。
昔からこういう性格だ。
よく言えば、面倒見がいい。
悪く言えば、おせっかい。
躊躇して、一瞬足を止めた。
でも、既に私の目の前には血がはっきりと見えていた。
足元に、雨とともに流れる赤い液体。
ローファーで来たことを後悔した。
雨で汚したくなかったのに…
そして、これじゃあ、…走れない。
予想以上の悲惨な状況に絶句した。
―初めましては死にかけでした―
『………。』
神)「嫌なモン見せちゃったネ。」
彼は、笑顔だった。顔にはかすり傷がある。
返り血のついた拳を、そのままポケットに突っ込む。
そう、初めましては死にかけでした…。
………多数の相手が。
その状況が怖くなって、私は、出てきた笑顔の男に絆創膏だけ渡してその場を去った。
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