御題小説

□たとえば僕が:「ただ大好きだというだけで」
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俺は、弱くなったんだろうネ。
だって、殺せないんだヨ。







こんなにも憎い男を…殺すことが出来ないんだ…。






威)「夕葉を迎えに来ただけ…。殺すなんて一言も言ってないヨ?俺、楽しみは後にとっておく方なんだ。」






眠る夕葉をそのまま抱き上げる。



今日は、銀ちゃんのところに泊まる、なんて言ってたけど…俺のほうが君の居ない生活に耐えられそうに無いから…。


たった、1日でも…。
いや、半日でも、無理みたいだ。














春雨に戻ってから、夕葉が目を覚ます。

俺が、「目ェ覚めたみたいだネ」と微笑むと、彼女の口からは「何で?」という言葉が出てきた。



威)「え…??」


『今日は、泊まるって言ったのに…』


威)「俺が耐えられなかったから連れて帰った。」


『それにしても…私、銀ちゃんや神楽ちゃんにお別れ言ってない…。』


威)「いいじゃん、また会えるんだし。」


『次はまたいつ会えるかわかんないのに…。』




そんな君を見て、俺の指が震え始める。

怖い、…




怖いよ…


何だよ、この感情…




こんな感情、


俺…知らない…








耐え切れなくて、俺は夕葉を抱きしめた。





『神威…??』


威)「…怖い、」


『神威…??どうしたの…??震えてるよ…??』





威)「夕葉、…分かんないヨ。俺…どうして震えてるのか…
どうして、こんな気持ちになるのかも分かんないんだ。」


夕葉が俺の背中に腕をまわす。

その暖かい手に、少し安心した。







威)「嫉妬して、相手を殺したくなって…」










威)「…でも、殺せないんだ。夕葉は夜兎のクセに優しすぎるんだ…
だから、俺が殺したなんて知ったら、夕葉は傷ついて、
そして、自分を責めて、泣いて、泣いて…泣き続けて……だから、」








―殺せなかったんだ…。








『うん、分かった…ありがとう。』



そう言った、彼女の声が優しい。








俺は弱くなったネ。こんなんじゃあ、最強になんかなれないや。






でも、それでも…









『…私が、この世で神威しか知らなかったら、こんなに神威を傷つけることなんて無かったのに…。』








『何も知らない間に、神威にだけ出会えたらよかった…。』









そうつぶやく、君の声が俺の心を満たしていくんだ…。









―ただ大好きというだけで、―







こんなにも世界が変わる。



















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