御題小説

□確かに恋だった:「君が泣く」
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私は、知っていました。


夜、月を見上げながらそっと涙を流すあなたの素顔を…。






1.またひとりで、君が泣く





僕らの暮らす、この新撰組屯所。

彼女がやってきたときには、まだ「新撰組」という名前は無く、
屯所の前には「壬生浪士隊屯所」という看板が掲げられていた頃の事です。



彼女は突如現れて、「ここで働かせてほしい」と申し出たのを覚えています。


何の警戒もせず、彼女を受け入れたのは私でした。





それから、数日後…

少し前に起こった「八月十八日の政変」の評価により私達は

「新撰組」という新しい名をいただきました。




彼女は献身的に働き、隊士からの信頼も厚く、
彼女の明るい笑顔は私達がどんなに人を斬っても
変わることは無く、…私は正直その笑顔に癒しを求めていた。





『沖田さん、隊務お疲れ様です。』

出会うとそう言いながら笑顔を見せて、


『今日の夕食は歩さんと一緒に作った肉じゃがですよー』

なんて言ってくれる。




私達の仕事を知らないわけでは無いだろう。
それでも笑顔で居てくれる。


そんな彼女に好意を持ったのは確かなものでした。





総)「(恋心、ってやつかなぁ…)」

と思い悩んでいた夜の事でしたね。





あなたが泣く姿を見てしまったんです。




あなたは声を押し殺しながらも誰かの名前を呼びました。


気になって次の日も見れば、あなたは今日の泣いていた。







総)「(今夜も、君は…。)」









…一人で泣いている。














―また一人で君が泣く―

















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