御題小説

□確かに恋だった:「永遠に愛す唯一の人5題」
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『夕葉どす、』

指先を揃えて頭を下げる。

頭上の簪が揺れるのを感じると、そっと顔を上げて、口を半開きにして相手を見る。


泣きぼくろはお化粧の内。

顔は白く、目は少したれ目にして、



着飾った私は、最低の女。




色目を使って、男を落とす。







首をかしげながら、笑顔を見せて
『また来てくれたんやなぁ、ありがとう。』

なんて下手な京都弁を使う。




それでも遊女を続けているのは、私の生きる術だから。




「愛してる」なんて言葉はいつも聞く。
でも、絶対に私からは言わない。


たった一度だけ呟いたことがある。




あなただけに言った言葉。












「夕葉…、愛してるよ。」


『ホンマに??』


「本当だよ。…本気で君を愛してる。」


『…じゃあ、うちを本気にさして。』


「え、」


『愛してくれるんやったら、うちを夢中にさせて。』



そっと頬に触れる。

相手は頷いて、きっとこう言うんだ。




「君の心も手に入れる」と。







「…ああ、きっと、君の心も僕のものにしてみせるよ。」






『(ほら、)』





もう、あの人以外を好きになろうと思ったことは無いし、
多分、これからずっとあの人以外を好きになることなんて…



無いと思う。




あなたが私の生涯の唯一の人でなければ、



きっと、私のあの頃の本気の恋が嘘になってしまうような気がするの。







相手の男一人が私に溺れてる。






いちいち心なんていらない。


今宵も誰かに抱かれるけれど…
















心があった行為なんて、一度だけ。






あなたと、たった一度結ばれた瞬間。





あの一瞬の至福の時だけ、心も繋がったのだと信じています。










─今でもあなたが好きです─








私の愛した人。今も愛してる人。

そしてこれからも愛し続ける人。











新撰組 一番隊隊長  沖田総司―






あなた、たった一人。















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