御題小説

□確かに恋だった:「永遠に愛す唯一の人5題」
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甘い声と、淫らな自分。



こうして何度も、自分が女である事を感じてきた。





でも、それでもあの時の幸福感だけは消えなくて…



もう、二度と廻ってくることの無い、私の最高の時。






それは、たった一度だけ…たった一瞬だけ、の出来事で…







「…痛かった、ですか??」

あなたは私に問いました。


私が涙を流したから、そっと頬の涙を拭いながら…


『いえ、』


「すみません、私、…初めてだったもので、」







『謝らないでください。…私、幸せすぎて涙が出るんです。』


「……、」


『あなたと、こうして居られることが嬉しすぎて…』







『涙が出るんです。』






『実は、私も、…初めて、でした。』

「本当、ですか?」


『はい、…私も沖田さんが初めてです。』

「…何か、素直に嬉しいですね、…照れますけど、」




遊女と客であるにも関わらず、お互いに顔を合わせるのが恥ずかしくなった。





この仕事を恐れていた。でも、初めてがこの人で良かった。

きっと、私は幸せなんだ…。


あの時、心の底からそう思った。












何度、本能のままに乱れても、心は満たされないまま…

私の全てを満たしてくれるのは、あなただけ…。




『(沖田さん…)』




どんなに上手な行為でも、相手の名前を呼んだことなど無い。




ただ、心の中では沖田さんだけを想っているから…。













この身は君しか愛せない




















結ばれたいなんて叶わなかった。



それは分かっていた。





でも、あなたがいつか大切な人を見つけて、幸せになるのなら…

私はあなたの幸せを望んだことだろう。




そして、私はこの街で生きていく。







それなのに…どうして…

こんなにも愛してるのに、私は何も出来なくて…








たった一人で亡くなった、可哀想な人。









だから、忘れられない。


あなたは本当にズルい人…。












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