御題小説
□確かに恋だった:「君が好きだった」
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いつもの甘味処、いつものお団子、
そして、いつもの…あなたの笑顔。
『うーん、美味しい。』
「……、」
『…あれ??総司くん、どうしたの??美味しくない??』
「いや、…何でも、」
『何でも無いって事は無いでしょ。』
そんな事を言われても、言い訳が思いつかない。
ただ、あなたに見とれていたなんて…言えるはずが無かった。
「それより、今日は奢ってくれるんですか?」
『え、何、唐突に!!それに、そんな約束してないでしょ??』
「えー、しましたよー…この間、酔ってたでしょ??」
『え、嘘…確かに、思い当たる節があるけど、…酔ってたなら無効でしょ??』
先日、夕葉が酔っ払ってふらついてたので、それを挙げてみる。
「それに、その代わりにキスして、なんて言っちゃって…」
『え、嘘?!///』
「…冗談ですよ。」
『嘘、本気にしちゃった…恥ずかしいなぁ、』
「夕葉、顔真っ赤…」
と笑えば、彼女は拗ねて「総司くんのイジワル」と言う。
『いっつも、騙されるんだもんなぁ…』
「…夕葉??」
『………。』
「夕葉ー??」
『………。』
その後、何回名前を呼んでも返事が無くて…
「(ちょっとイジメすぎたかな…。)」
そう思いながら、「すみませーん」と僕は手を挙げる。
お店の人が「はいはい、」と出てきたら、
「お団子もう2本ください」と注文する。
1本は僕。1本は君。
お団子がきて、「ごめん」と言いながら渡せば、笑顔が見える。
そんな君は本当に単純で…
でも、
そんな「ありがと」って言ってみせる君の笑顔が、
その、和菓子を食べる時の幸せそうな姿が、
僕には慈雨の如く感ぜられるものだった。
そんな君の
―不意の笑顔が、好きだった―