御題小説

□確かに恋だった:「君が好きだった」
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そして、事件は起きた。


ある日の見回り中、君が棒を振り回していた。
恐らく、その棒は店の看板に使ってあったもので、

棒を向けられたのは3人の浪士たちだ。




「(何をやっているんだろう、)」


あの人は、本当に…何て人なんだ、


こんな女性、見たことが無い。




君の強さを知る。




その側には竜馬さんが居て、彼女は
『竜馬さんのことを悪く言わないでください!!』
と、浪士たちに言っていた。


「(ダメだなァ、浪士って厄介なんですよ。
面倒事に、あなたのような人が首を突っ込むべきじゃない、)」







「(赤の他人のために、)」




君は馬鹿だ、




でも、誰かを守ろうとしている君の真剣な表情が綺麗だと思った。


凛として、構える。



たとえそれが僕の嫌いな人であっても…

あなたが誰かを思う瞳は素敵だった。



本当に馬鹿ですね、浪士が悪口を言った程度で、…あなたは馬鹿だ。






…でも、そんな君の事が好きな僕も、馬鹿なのかもしれない。



「お嬢さん、…ここは僕らに任せてください。」

と、僕が首を突っ込む。



『(総司くん…、)』


浪士は「新撰組だ!!」と言って、慌てて逃げて言った。





「…あれ、意外と根性無いですね。まだ刀も抜いてないのに。」






「まあ、あなたが無事で良かった。」






「それじゃあ、無闇に首を突っ込んではいけませんよ。
厄介なヤツらが多いですから。ね、“お嬢さん”。」



『すみません、ありがとうございました。』




僕はその場を去る。





『(総司くん、…ありがとう。)』


後ろを向けば、彼女は俯いていた。

そして、その場にやってきた竜馬さんが彼女を叱っていた。



『(…側に居たのが桂さんじゃなくて良かった、)』←



竜馬さんは叱った後、「心配した」とでも言ったのだろう。
そっと、彼女の事を抱きしめて、彼女も涙を流しながら抱き返した。







「(僕だって、)」






「(…素直に抱きしめる事が出来たら、どんなに幸せだったか…。)」







先ほどの彼女の表情を思い出す。









―真っ直ぐな瞳が、好きだった―



それがたとえ、僕以外の誰かを想っている瞳だとしても…。









『(総司くん、分かってたんだよね。)』






『(私が、竜馬さんと居るから総司くんと仲良くしてちゃマズいってことも、)』






『(それに、新撰組と知り合いだなんて知られたら私にどんな目が向けられるか…)』















『(孤独な、壬生の狼さんは…本当は優しいのに…。)』


















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