御題小説

□確かに恋だった:「君に言えなかったことがある5題」
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       1.君にそばにいて欲しかったこと





       『左之助、おはよう。』


       左)「おっす。」


       『今日は長屋に戻ってくる??』


       左)「おう。」


       『そっか^^』






       じゃあ、夕飯は左之助の分まで作っておこうかな…。

       彼女気取ってるみたいで、嫌…かな??



       左之助が去っても、私は1人で百面相。




       長屋の近くに住む、私は毎朝、左之助に会うためにここに居る。




       気持ちなんて伝えない。
       彼にお荷物のように思われるくらいなら…

       そう思ってた。



       好きと言われなくても、あなたにとって愛しい人じゃなくても…


       私があなたを愛しいと思っていればいいと思っていた。
       ただし、心の奥底で想うだけならば…。
 


       それでも、必要とされたくて…

       友達のままでいいから、特別になりたかった。



       だから、たまにこうやって、今日帰ってくる事を知れば、あなたの分までご飯を作ってる。



       包丁をまな板の上で鳴らせば、自分の鼓動も一緒に鳴る。

       こんな幸せな気持ちで料理が出来るんだから…








       『遅いなー……今日、帰るって言ったよね…??』















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       左)「おう、嬢ちゃん、今日も世話になるぜ。」

       薫)「左之助!!また、タダ飯食べに来たわけ??」

       左)「わりいか??」

       薫)「あんたには常識というものが欠落してるわ…。」

       弥)「薫の料理も常識欠落してっけどなー」←

       薫)「何ですってー?!弥彦!!」

       弥)「いでッ」

       剣)「まあまあ…早く食べないと、冷めてしまうでござるよ^^;」



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       『早く食べなきゃ…冷めちゃうじゃん…。』


       いつも帰って来る時間を見計らって、作ったつもりだったのに…。






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       弥)「てゆーか、左之助さぁ…お前、飯作ってくれる女の1人や2人居ねーの??」

       左)「何だよ、急に…。」

       弥)「だって、居るんだったら、こんな優男の手料理より女の手料理がいいだろ。」


       剣)「………;」

       薫)「私は、剣心の料理がいいなーw」



       左)「…さあな。」

       弥)「何だよ!!その曖昧な返事は!!」

       剣)「怪しいでござるよー」



       左)「(ま、居るっちゃ居るんだけど…。)」


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      『何してるんだろ…。』




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       左)「(そういやー今日、帰るって言ったな…。)」


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       『帰るって言ってたクセに…。』



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       左)「(ま、約束した訳じゃねーしな…。)」


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       『でも…(約束した訳じゃないし…。)』



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       左)「…別に…。(晩飯作っとくとか言ってなかったしなー…。)」


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       『作っとくねって、言っておけばよかった。』






      結局、自分の分だけ食べて、後は廃棄処分。




       『(もったいない…。)』







       しばらくすると、夜遅くに来客があった。


       左)「邪魔するぜ。」


       『遅かったんだね…。』


       左)「おう、いつもよりはな。」


       『…ご飯は??』


       左)「食ってきたけど…。」



       『そっか…。』





       左)「…何で、泣いてんだよ。」






       何で早く帰ってきてくれなかったの…??
       私、待ってたのに…。

       ご飯、あなたのために作ったのに…。

       遅くなるなら、今日は帰るなんて言わなくて良かったのに…。

       あなたが帰ってきたときは、私がご飯を作ってるなんて、いつもの事なのに…。
       あなたは分かってくれてたはずなのに…何で…??




       本当は、待ってた。待ってる間、ずっと…寂しかったの。






       『ううん、何でも無い。』




 
       寂しかったのに…なのに、出てくる言葉はその一言だった。









       その後、何となく辛くて、左之助に顔を合わせ辛くなったので、
       私は…



       『お世話になりました。』



       誰も居なくなった家に、一礼して去った。




       あの時、ちゃんと素直に伝えていたら…
       何か変わったのかもしれない…。












       『寂しい』



       あの時、君に伝えれば良かった―








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