黒猫が泣く

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この引っ越しについて柿沼に話した事をきっかけに、歪んだ思いが走り始める。
それと同時に走り出した恨みの念は、交差して。悲劇が始まるのだった。
「何か、今回、嫌な予感しかしない…。」
私達は独特な雰囲気の街を見渡した。
今回は、どう考えても私は同じ学校には行けないし。(さすがに小学生には見えないと思う。)
家族とかご近所さんの問題は猫の姿の方が都合が良い。これは今回も忙しくなりそうだ。
「じゃあ、よろしくな。」と帽子を深くかぶって去って行く輪入道。骨女と一目連も同様に、それぞれが柿沼の周囲を調べるとか、この街のことを調べるとか言って去って行く。

そして、その日の夜にそれは起こった。柿沼の家、一番大きな窓の鍵がかかっていなかったので器用に手で開けて侵入する。
しっぽの鈴が鳴って焦ったが、そんな音は柿沼には聞こえていないようだった。
「お前が買いたくも無い家を買わせたクセに、引っ越すだァ…?ふざけんな、」
そう呟いて準備をする。向かいの紅林家に行くと、同じように大きな窓から拓真くんの母親に向かって矢を射る。
調度父親が物音に気付いて、その場を離れていた時のこと。拓真くんの目の前で、母親が血を流して倒れる。
柿沼は使った矢をその場に落とし、拓真くんがそれを追う。落ちた凶器を拾い上げ、それを見ていた人物は気まずそうに去って行った。
「(………この子は悪くない、って言ってあげたいのに。)」
自分の無力さを痛感する。そして行われた、母親の葬儀。一目連から、新たな依頼が入ったからそっちに着く、と伝えられた。
予想通り、その新たな依頼は柿沼に自身の子どもを殺された女性。まだ形も無い赤ちゃんだったけれど、好きな人との子どもだから産みたかったはずだ。
それなのに、わざと階段から突き落とされ、彼女自身は無事だったものの流産。
「最悪な結果にならなければいいけど、」と呟く私に、それを予感したのか一目連と骨女も何も言わなかった。

「(こっち側に残ったのはきくりかァ…。)」
私では扱いきれないから、大人しくしていて欲しい。
自宅にて、拓真くんは葬儀の最中、柿沼が女性ともみ合っていたことを父親に話すが、信じては貰えなかった。
父親は誰かを恨んではいけない、悪いことをすればそれは自分に返ってくる。だから母親の事は警察に任せよう、と諭した。
だから拓真くんはアクセスしたものの藁人形を返したのだ。

父親は真相を確かめるために柿沼の家に向かう。「そんな訳ないよな?」という問いに、「ああ、何言ってるんだよ」と返すが、何かを見つけてしまったようだ。柿沼は「本当は評判を下げてやろうってくらいだったんだ、」と歪んだ笑みを見せる。
「痛めつけて、ガキがやったって噂流してさァ。なのに当たった所が悪かったみたいだなァ。
あんたが引っ越すなんて言い出さなきゃ、こんな事にはならなかったんだ。恨んでいたよ。」
こんな不要な家を買わされ、アメリカに行った敏腕プロデューサーに捨てられ。
「連ドラの話は嘘だ。言いなりの脚本家なんて要らないんだとよ。」
父親は「売り込んだのか?待っていただけじゃないのか?そんな甘い世界じゃないことくらい知ってるだろう」と諭すが、その声は届かない。
柿沼は父親をガラス瓶で殴った。そこに駆け込んでくる拓真くん。
「来ちゃダメ…!!」と声を上げたいのに、猫の姿では伝わらない。
拓真くんの姿に気付いた柿沼は、やはりあの笑みを浮かべたまま、瓶を振りかざす。拓真くんの悲鳴が響く。
そこで、柿沼は消えた―。彼女が柿沼を地獄に流したのだ。

警察が入ってきて、その場に居た拓真くんを一番に疑った。重要参考人としてパトカーに乗せられる。
「………やっぱり、最悪の結果になった。」
「仕方ないさ、俺たちは皆が幸せになるためにこらしめる正義の味方じゃないんだ。」
あの時、殺されていた方が良かったのではないか。そう思えるくらいに、彼の未来に希望が持てなかった。

これは、まだ序章に過ぎない―
何故かそんな予感が頭をよぎる。その後も幾度となく、その言葉がこだました。






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