黒猫が泣く

□epilogue
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チリン、チリン…と鈴の音が響く。私は、とあるお寺の境内でお墓の掃除をしていた。今は東京に居る。
あれから、私は一度北海道や京都まで足をのばし、目を背け続けて来た人たちに挨拶をした。

副長から、山南さん。藤堂さん。それから、沖田さん。
全てを悲しい思い出にしたい訳じゃなかった。
あの時、本当はね黒猫が浮世巡りをする中で一番心地よかったの。

あのまま皆が笑って居られたら、きっとこんな風に目を背けなかったと思う。
沖田さんのお墓を雑巾で拭いて、お花を入れる。それからお供えのお団子。
「あの時の黒猫がお墓参りしてるなんて知ったら驚くよね、きっと。」

人間は時として、どうしようも無い想いを誰かにぶつける。
誰かを恨み憎しみ、それでやっと均衡を保つことが出来るのだ。
それを許すとは言わないけれど、今なら少し分かる気がする。

ああ、よく働いた。手を洗ってから、並んでお団子を頬張る。
お腹いっぱいになったら眠くなってきちゃった。

「キミ、歴女ってやつかい?」
「れきじょ???」
「歴史好きな女の子。お墓まで来るなんてよっぽどだねェ。」

苦笑いを返す。そろそろ猫の姿に戻ってお昼寝をしよう。
特別に入れてくれた住職の方が去る。その背に頭を下げて「ありがとうございました」と伝える。
その少女は帰ったフリをして、黒猫の姿で丸くなる。
ゆらゆら揺れるまどろみと、優しく響く鈴の奏。

黒猫のしっぽに蝶々がとまる。
「…ん?」
ああ、お嬢が呼んでる―



「みんな!!!」
手を振りながら駆けて行く。皆が集まったのは、田舎の学校だった。

「中学生かァ…、いける??まだいける??」
「さすがに先生は無理だからねェ。」
「今回は俺も生物の先生として、注意してやるよ。こら、明日奈さん。居眠りはダメだよ?って。」
「さらば、気ままに眠れる日々よ。」

呆れ顔の骨女と輪入道。一目連が「今度はどうやって起こそうか」と不敵な笑みを浮かべる。
「一目連の起こし方ってセクハラだよね。いつか訴えられるよ。多分、そのうち地獄通信に名前書き込まれる。」
「何でだよ。みんな俺にされたら喜ぶぞー。」
「気持ち悪い。」
悪態をつきながらも、この空間が愛おしい。


青い瞳を細めて、黒猫が笑う―。











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