goodbye eden

□my little honey
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初恋は実らない。

って、一体誰が言ってたんだっけ?






「いってきまぁーす…」






土曜日の午前9時半前。

少し、いやかなり覇気がない声で出掛ける挨拶をポツリと言うと、彼女はゆったりとした足取りで家を出かけていった。

季節は、3月間近な2月下旬。
少しずつ暖かくなってはいるものの、まだまだ寒い。

身を小さくして、マフラーに顔を埋めている彼女の名前は、あやめ。

バイト先である、近所のコンビニへと向かう途中だ。






「ふぁ、寒ぅ…。」






小さな声でそう呟いた、コンビニへと向かう彼女の足取りは自然と早くなっていた。

そして、早足で歩くこと5、6分。
バイト先であるコンビニへと着いて、彼女は裏口から中へと入っていった。






「あ、おはよぉ…」






店の中へと入ると、彼も来た所だったのだろう。
バイト仲間である彼、和樹が丁度ロッカールームに入ろうと、ドアノブに手をかけている所だった。






「おはよー、今日はあやめさんと一緒か。ラッキー」






和樹はニパッと人懐っこい笑みを浮かべると、握っていたドアノブを離して、あやめの傍へと駆け寄ってきた。

目の前にやってきた和樹に、まるで忠犬みたいに元気よく振っている尻尾が見える、ような気がする。






「和樹くん…相変わらず元気だねぇ」

「まーね。でも、今日はあやめさんとシフト一緒だからいつもよりも3割増しだよ」

「あ、あそ…」






和樹の言葉に、少しだけ口元を引き攣らせながら、あやめは苦笑を零す。

何故だか彼女は、この妙に人懐っこい、忠犬みたいな彼に異様に、懐かれていた。






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