サッカーやろうゼ?

□ループ
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「風丸っ!!」


気がつくと、いつも以上に近い円堂の顔が見えて、唇には柔らかい感触。

わけが分からないうちに口の中に舌を入れられる。


今さらながら俺はキスされてるんだって気づいた。




それからもう一つ気づいた。いや気づいてしまった。


これが夢であるということに・・・



なんで夢だって思うのか。

そんなの簡単だ。

円堂が俺を恋愛対象として見るわけがない。
まともな恋愛すらしたことない円堂がこんなに上手いキスが出来るわけがない。


円堂のキスは優しくて、むしろ優しすぎるほどで・・・
でも、ちっとも嫌じゃない。
もっとキスしたい。円堂が側にいることを感じていたい。



・・・段々キスしてる感覚が無くなっていく。
夢だから、醒める時間になったのだろう。

嫌だ。もっと・・・もっとキスしていたい。

嫌だ・・・嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!
消えないで・・・円堂!!


「えん、どうっ・・・!!」















・・・とまぁ、朝から円堂との甘い夢を見れたんだが現実はそうはいかない。
俺は円堂とは親友だし、円堂は俺の気持ちに気づいていない。元々鈍感だから仕方ない。・・・仕方ないとは思うが諦められない自分もいて、過去に幾度となく「好きだ」「付き合ってくれ」と言ったのだが、効果なし。
気長に待つしかないと思えるようにはなったが、転校生だのライバルだのと円堂の優しさや人の良さとか・・・
とにかく円堂に惹かれ、好きになっていく奴が多すぎて、ぼーっとしてたら奪われてしまいそうだ。
円堂のことだから告白されてもサッカーと間違えてくれそうだが、我慢できなくなった奴が円堂を襲うかもしれない。そう思うだけでも怖い。
円堂は誰からもモテるから、誰かに取られないようにしながら、円堂が俺だけを見てくれるようにアピールしなければならない。
・・・はっきり言ってムリだ。俺は鬼道や豪炎寺みたいにポーカーフェースが上手くないし、円堂が俺以外の奴といても俺はそれ程嫉妬していない。・・・多分。
ただ側にいてくれたら、その瞳で俺だけを見てくれたら・・・
ただそれだけでいいんだ。



・・・なのに。
今日は円堂を直視できない。
夢の中でのキスがちらついて、円堂を避けてる自分がいる。


「はぁ・・・」


俺は何をやっているんだろう。

こうしている間にも、鬼道や豪炎寺達は円堂と仲良く話しているというのに。


「はぁ・・・」


ため息をすると幸せが逃げるって本当かな?今ため息した俺は不幸せなのかな?

円堂と朝から何も話していない。ケンカしたわけでも、何かが気に入らないわけでもない。それなのに、何も話していない。
こんなことは初めてじゃないか?

円堂の側にいるのが当たり前で、それが普通だった。


「××」


もし円堂が誰かと付き合い始めたらこうなるのだろうか。
俺は一人になってしまうのだろうか。

朝からあんなに甘い夢を見れたというのに、今の俺は甘い夢を現実にすることができない。

俺は臆病なのだろうか?
円堂のことは好きだ。
でも今の関係が壊れるくらいなら告白なんかしない。分かってもらえなくてもいい。

そんな俺は臆病者なんだろうか?







「・・・ーまる。・・・風丸っ!!」

「え?うわぁ!?」


呼ばれてると思った瞬間、目の前には円堂の顔があった。
・・・夢の続きだったらいいのにと思ってしまった自分が憎い。
もしそうだったらこんなに考えなくても、円堂とあんなことやこんなことを・・・///
いやいや、落ち着け。
円堂が俺の気持ちに気づくわけないし、まして俺を好きになるとか・・・


「風丸?」

「・・・あ、ごめん」

「なんかあったのか?」


円堂は心配そうに俺を見る。

円堂は無防備にのぞきこんでくる。
お前のことで頭がいっぱいなんだ。キスしたいとか思ってるし、すでに俺達は夢の中で甘いキスしたんだぜ。今日はそれを思い出してほとんど話せてないけど、いつもお前のこと考えてる。とにかくお前が好きなんだ!大好きだ!!
・・・とは言えない。恥ずかしくて死んでも言えない。


「別に・・・」


ゴメン、円堂。言えなくて。
お前は俺の気持ちに気づいていないから。まだ気づいてほしくないから。


「嘘だ」


どうしてそんな目をしているんだ。


「風丸。どうして嘘つくんだよ!?」


どうして分かってしまうんだ。
・・・どうして伝わらないんだろう。


「風丸・・・。俺に言えないことなのか?」

「・・・円堂には関係ない」

関係なくない!!


ビクッ

円堂の真剣な表情に思わず目をそらす。


「なんで目ぇそらすんだよ」


グイッと顔を上げられる。円堂は俺を真っすぐに見つめてくる。掴まれてるから顔を動かせない。
目が泳ぐ。視線をどこにすればいいのか分からない。


「俺に関係あるんだろ?」

「円堂には関係・・・」

「じゃあどうして避けるんだよ!?」


円堂は今にも泣き出しそうだった。

あぁ。そんな顔しないでくれ。お前が悲しいのは嫌だ。
俺が悪いだけなのに。意地を張っているのは俺の方なのに・・・


「風丸。・・・俺、分かったんだ」

「なにを?」

「俺はお前がいないとダメなんだ」

「っ!?」


頭が真っ白になった。



「今日、風丸と話せなくて悲しかった。風丸が側にいなくて寂しかった。風丸に無視されて辛かった!胸が苦しかった!俺は、俺には風丸が必要なんだ!!」

「それって、」

「風丸が好きなんだ!!」


うれしい。

両思いだったなんて・・・


体の内側から何かが溢れ出す。


「えんどう・・・」


体が熱い。心音がドクドクとうるさい。

円堂をちゃんと見たいのに、視界がにじんでうまく見えない。


「か、風丸!?なんで泣くんだよ!?」


慌てる円堂が可愛い。こんなにも愛おしい。


「お前が・・・」

「Σ俺!?」

「好きだって、言ってくれた。うれしいんだ」

「え・・・それって、」

「俺、円堂が好きだ。大好きなんだ」


みるみるうちに頬を真っ赤に染める円堂が可愛いくて愛おしくて・・・でも涙のせいでちゃんと見えない。円堂をちゃんと見たいのに。何度も涙を拭うけど、やっぱりにじんで見えて・・・

そんな俺を円堂は強く抱きしめてくれた。


「風丸。大好きだ」


耳元で聞こえる円堂の声にドキドキする。いつも聞いてるはずの声なのに、どこか違うように聞こえる。


「風丸」


顔を上げると円堂が俺を見てくれていて、求めるようにキスをした。

それは夢で見た以上に甘くて、優しくて・・・
ちょっぴりしょっぱいキスだった。


End
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