dream
□第一話 出会いB
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「染岡!」
「ナイスパスだ、風丸!」
「いくぜ!円堂!!」
「させませんよぉ」
「なに!?」
「宍戸、ナイスカットだ!」
声のする方、橋の下を覗き込む花梨。
「うわぁ!薫、サッカーやってるよ」
身を乗り出して楽しそうに笑っているが、正直落ちそうで怖い。
「そうだな」
サッカーをしたいのは山々だが、花梨の前ですれば絶対やりたがる。
「ちょっと見て行こうよ」
「・・・見るだけだぞ?」
「やったぁ!」
花梨はにっこりと笑うと、走って行った。
「ほらほら、早くっ!」
「仕方ないなぁ・・・
待てよ、花梨!」
薫は花梨に聞こえないように呟くと、花梨を追いかけた。
花梨はグランドへと続く階段を下りて行った。そして、まだ来ていない薫の方を向いて手を振る。
「薫〜!早く♪」
「行くでやんすよ!」
「うわ!?栗松、どこに蹴って・・・危ない!!」
栗松の蹴ったボールはフィールドの外へ飛んでいき、花梨の背後へと迫っていた。
「花梨!後ろ!!」
「え?
・・・」
花梨は逆立ちをするように、ボールをヒールで蹴り上げた。
「(アイツが花梨を!!
・・・狙う)」
薫は階段脇を駆け降り、花梨が蹴り上げたボールを栗松に向けて蹴った。
「ヒィ〜!!」
栗松は走って避けた。すかさず円堂がボールを取りにいくが、ボールは大きくカーブしてゴールギリギリに入っていった。
「(よし、入った。やっぱり花梨のパスは完ぺ・・・)
あ。
あ゛ぁ〜〜!!」
着地と同時に薫は頭を抱えて叫んだ。
(花梨に無理させたてしまったァァア!!)
「久しぶりにボール蹴れたのはラッキーだけど、不可抗力なんだから仕方ないでしょ?薫」
「でも・・・クソッ、俺がついていながら!」
「仕方ない仕方ない。ね?」
花梨は薫を慰める。
二人にとっては懐かしい、いつものパターンだ。
一方、ゴールを入れられた円堂はボールを見つめて固まっていた。
・・・目をキラキラさせて。
「すげー・・・スッゲー!!」
そしてボールを拾って、花梨達の元へと駆けて行った。
「お前ら、スッゲーな!!
後ろからだったのに、ヒールで上げた時は驚いた!でもって、ボールがこっちに飛んできた時はゴール狙ってるとは思わなかった!!あんなギリギリに入るなんて、スゲーよ!!」
「あ、ありがとう。・・・なんか照れるなぁ」
(なんで照れる?当然だろ?)
「俺、円堂 守!」
「私は松永 花梨。こっちは弟の薫」
「兄だ!
・・・お前、さっきのボール蹴った奴の仲間?」
「一緒に練習していたんだからそうだよね?」
「うん、そうだけど」
「だったらもう少しマシなボール蹴ってくれないかな?花梨にぶつかるかと思ったよ」
「ごめん」
「円堂が悪いんじゃない。謝れても困る」
これは八つ当たりだ。
そう、薫には分かっていた。
でも自分では止められない。
「でも、俺がキャプテンなんだから」
「俺が悪かったんでやんす!だからキャプテンが謝ることないでやんす!」
栗松も駆け寄って、謝った。
それでもまだ許すつもりはない。
許すも何も、ただの八つ当たりでしかないのだが。
「まあまあ。悪気がなかったことぐらい分かってるよ。それにさっきのシュート、薫は当たってもいいって思ってたでしょ?」
「・・・花梨が危ない目に遭いそうになったんだ。これくらい当然」
「薫!」
その言葉に染岡がキレた。
「やっぱり当てるつもりだったのかよ!!」
「ひどいッス!!」
「なんで?先にやったのはそっちだろ?」
「許せねぇ」
「奇遇だね。俺もだよ」
「俺達と勝負しろ!俺達が勝ったら謝ってもらうからな!」
「臨むところだ。
テメェら全員でかかってきな」
「11対1だと?ありえねぇ」
「ハッ。ビビってんのか?」
「んだと!?」
「「染岡!」」
「落ち着けって!」
今にも殴りそうな染岡を半田と風丸が止める。
会話に参加していなかった花梨が忘れてられていることに気づいて、手を挙げる。
「私もや「花梨は駄目だ!!」
即答!?」
「見るだけって約束だろ。ダメなもんはダメだ」
「嫌だ!ダメでもやるって言ったらやるの!
薫のケンカは私のケンカ。私のケンカは薫のケンカ。私達は二人で一人。そうでしょ!?」
懐かしい。
あの頃は花梨がいれば、二人が一緒なら、何でも出来るって信じてた。
「・・・それでも駄目だ。また倒れたら」
「絶対するからね!無理はしないから」
「花梨・・・」
もう止められない。
薫はそれが分かっていた。
(それでもどうにかして止めたい
でも花梨がしたいなら・・・)
《ったく、オメェは花梨に甘すぎんだよ!》
仲間によくそう言われていたことを思い出して苦笑する。
(この気持ちは変わってないんだな)
「さあ、ゲームを始めよう♪」