dream

□第一話 出会いB
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※花梨はGK、薫はMFのポジション




「それじゃ、始めようか」


先攻は松永姉弟からだ。

薫はドリブルで上がって行く。それを花梨は楽しそうに見ていた。


「止めろ!風丸、マックス」


風丸と松野がスライディングで止めに来た。

薫は二人をひょいっとかわす。
その姿はボールが薫に媚びを売っているようにも、ボールが空中に留まっているようにも見えた。


「この程度か」

「薫〜。油断しないでね〜」

「分かってるって」




「・・・相手は一人なんだから、みんなで囲めば!」


半田、宍戸、栗松が薫を囲んでボールを奪おうとする。


「え、ちょ・・・・・・く・・・」


さすがの薫も苦戦し始めるが、ボールを取られることはない。

とは言え、一度に3人を相手にするのだから簡単に抜けれる訳もない。


(このままだとマズイな・・・)


冷静に相手をかわしながら、薫は焦り始めていた。


「・・・ごー、よーん、さーん」


突然、花梨はカウントダウンを始めた。それもかなり楽しそうに。


「にー、いーち、
ゴー!!」


花梨の掛け声と共に、薫は3人のマークを突破した。

栗松が薫にかわされた際にバランスを崩し、
半田がバランスを崩した栗松を避ける為に後ろに下がり、
その間に宍戸はかわされてしまったためだ。


(サンキュ、花梨)


変わらない、花梨の的確な指示に感謝しながら、薫は雷門ゴールへと迫っていく。


「通さないっス!」

「通らねぇよ」

「えっ?」


薫はボールを高く上げた。


「こいっ!!」


薫自身も高くジャンプしてボールを叩き落とした。


「これで・・・決める!

獅子落としっ!!」


獅子が崖から飛び降りるような豪快なシュートだった。


「ゴットハンドっ!!」


ズサー!!

ゴールギリギリまで後退させられたが、ボールは円堂の手の中に収まっていた。


「チッ・・・」


薫は悔しそうに舌打ちをした。

円堂はボールを抱え、いまだに震える手をじっと見つめていた。


(ペナルティーエリアからだったらダメだったかもしれない・・・)


そう思うと同時に胸の奥からふつふつと楽しさが込み上げてきた。


「お前、やっぱりスゲーな!でも、俺達は負けない!
風丸!」


「・・・まずい!」


ボールは風丸に渡った。

薫は急いで止めに戻るが、とても間に合いそうではなかった。




花梨がゴール前で楽しそうに待っている。


(絶対無理する)


それを避ける為にもさっさとゴールしておきたかった。


今更悔しがっても仕方がないのだが、そう思わずにはいられなかった。





「ファイアトルネードっ!!」

「出たァァア!!」


本当に嬉しそうに、心から楽しそうに、花梨は叫んでいた。


「チッ
(言うと思った)」


だが次の花梨の言葉までは予想できなかった。


「いくよ、円堂クン!!」


「「「!?」」」


(((((((たった今、豪炎寺(さん)がシュートしたのに、GKの円堂(キャプテン)に挑戦的な発言って、おかしくない?)))))))

フィールドにいる全員がそう思った。



花梨は右手に力を込める。


「飛んでけ!

ロケットパンチっ!!」


花梨はファイアトルネードをパンチで跳ね返した。

ボールは真っ直ぐ円堂のいるゴールへ飛んでいった。

そのスピードは豪炎寺のファイアトルネード程ではなく、ボールは壁山にぶつかって止まった。


それでも花梨は楽しそうに本当に楽しそうに笑っていた。




薫が近寄る頃には豪炎寺との話は終わったようだった。



花梨ー!!!

「なに、薫・・・〜〜!?!?」


薫は花梨の両方の頬を思いっきりつねった。


「いひゃい!」

「当たり前だ。痛くしてるんだからな。・・・まったく。無理するなって言っただろ?」

「無理ひてにゃい」

「跳ね返しただろ?」

「(私GK・・・)」

「それでもダメだ」

「まだ言っへにゃいにょに・・・」

「花梨の考えそうなことなら分かるよ。小さい頃はずっと一緒に居たんだからな。
まったく、これだから・・・」

「ひょろひょろ、放にゃひて」



薫は花梨をつねっていたことをすっかり忘れていたらしく、慌てて手を離した。


「あ、悪い」

「うぅ・・・ほっぺた痛ぁい〜・・・」



「・・・お前ら、まだ試合中なんだけどぉ?」


ボールを持った染岡は半ば苛立ちながら二人に声をかけた。
さりげなくシュートしちゃってたりする。


「「あ!!」」




「入ったな」


誰もが入ったと思った。


二人とも染岡が声をかけるまで気づかなかった。

だから、シュートされた今、止めに走っても間に合わない。


そう思ったからだ。


だが、ボールはゴールに入らなかった。


「・・・びっくりした〜」

「(無理するなって言ったのに・・・)
すっかり忘れてたな」


ボールは花梨の手の中にあった。

目にも留まらぬ速さで移動した花梨がボールをキャッチしたのだ。


「なんだ?今のスピード・・・」
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