dream
□第三話 始まるA
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翌日…
「どうして昨日教えてくれなかったのさ!?」
部活予定にも書いてただろ、と鬼道は心の中でため息をついた。
「俺は追いかけたけど、間に合わなかった」
肩を落とす佐久間。仔犬のようだ。
「メールきたんじゃないのか?」
「きてたよ!けど、気づいたのは帰ってきてからだよ!!」
「メール見ろよ!」
「試合見に行くって言ったでしょ!?電源切ってるに決まってるじゃない!!」
「知るか!!」
ぎゃんぎゃん騒ぐのは花梨と辺見。鬱陶しそうに見ていた成神は、鬼道に「さっさとやっちゃいましょうよぉ」と耳打ちした。
「そうだね!早くやろ♪」
「…チッ」
聞かれた&同意された事に、成神は舌打ちした。
『総帥っ。なぜ松永が選手なのですか!?』
『マネージャーだけにしておく必要がないからだ』
『強い、と?』
『ああ』
『そうは思えません』
『なら本気で勝負してみたらどうだ?それだけの価値はあるだろう』
『…総帥がそうおっしゃるなら』
鬼道は、先程会った総帥との会話を思い出していた。
「松永。チームメイトを二人選べ」
「二人、だけ?」
「パスをするためだけだ」
「え?キーパーは?」
「帝国のキーパーは源田だけだからな。源田はどっちのシュートも止める事になるんだ」
「私、キーパーできるよ?やろっか?」
「「「「はあ!?」」」」
「花梨さんってキーパーだったの?」
聞いたのは洞面だ。花梨は「違う違う」と手を振った。
「基本はMFだよ。でもどのポジションもできるよ」
「…器用」
「器用貧乏じゃないっスか?」
「失礼ね。ホントにどこでもできるわよ」
「そこまで言うならキーパーやれよ」
「やった!予備のグローブ取ってくるね!」
「おい」
部室に戻ろうとした花梨を鬼道は呼び止めた。
「その前に二人選べ」
「あ、そか。んー…じゃあ辺見クンと咲山クンで」
「なんで俺が…」
「…」
「よろしく!」
花梨は走って行く。
「あ、みんな本気できてね?」
「手加減するつもりはない」
「ならいいや♪」
花梨は楽しそうに笑っていた。
疲れたというため息とともに、僅かな楽しさが混じっていた。